
アマゾン・ドット・コムの課税逃れに対する監視の目が強まっている。
10月4日、欧州連合(EU)の欧州委員会は、ルクセンブルクがアマゾンに最大2.5億ユーロ(約330億円)の「違法な税優遇」を与えていたことを認定した。同時に、ルクセンブルクに対して追徴課税で取り戻すことを指示している。
欧州委は「アマゾンがEU域内で稼いだ利益の4分の3は課税を逃れていた」としており、それがEU法によって禁じられている「国家補助」に当たるとの主張だ。一方、アマゾン側は「ルクセンブルクの税法と国際租税法に完全に従って納税している」と反論しており、議論は平行線をたどっている。おそらく、この問題は長期戦となるだろう。
そもそも、こうした動きは今に始まったことではない。アマゾンをはじめ、アップルやスターバックスなどのグローバル企業は国をまたぐかたちで事業を行っており、一方ではタックスヘイブン(租税回避地)などを利用して巧みに課税を逃れてきた。いわば、企業側に有利な仕組みをつくっていたわけだ。
しかし、その国で金儲けをしていながら納めるべき税金を納めないというのは、インフラや社会制度のタダ乗りと同義である。当該国にとっては自国のリソースを使われるだけ使われた挙げ句、本来は手に入るはずの税収が失われることになる。そのため、ヨーロッパを中心に「事実上の脱税行為は許さない」という流れが生まれ、国際的な課税逃れに対する監視の目が強化されているのだ。
課税逃れをしている企業と正直に税金を納めている企業が同じ市場で戦ったとき、前者のほうが有利になるのは明らかだ。そのため、これは市場の不公平性という問題にも通ずる。
8月には、アメリカのドナルド・トランプ大統領がアマゾンについて「税金を支払っている小売店に大きな被害をもたらしている」「アメリカの町、市、州に影響を及ぼし、多くの仕事を失わせている」とツイッターで非難しているが、その背景にはこうした事情があるわけだ。
欧州委は、2016年8月には「アップルがアイルランドから最大130億ユーロの違法な税優遇を受けている」として、アイルランドに対して追徴課税で取り戻すように指示している。しかし、進展がないため、今後はEU司法裁判所に訴えるかまえだ。
また、15年にはスターバックスとフィアット・クライスラー・オートモービルズに対しても「違法な税優遇を受けている」と認定しており、それぞれオランダとルクセンブルクに追徴課税を指示している。金額は2000万~3000万ユーロ(約27億~41億円)といわれるが、それまでいかに巨額の課税を逃れていたかがわかる。
税金逃れを続けてきた、アマゾン日本法人
アマゾンについては、日本法人のアマゾンジャパンも問題になったことがある。
アマゾンのクレジットカード決済センターはアイルランド・ダブリンにあるため、日本国内でアマゾンのクレカ決済を利用しても「海外での購入」という扱いになり、アマゾン側は日本法人を「補助業務を行っているだけの存在」と位置づけていた。「恒久的施設(PE)」ではないために、「日本に法人税を納める義務はない」という主張だ。
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