
2015年の「国勢調査」によると、日本の高齢化率(65歳以上の人口比率)は26.6%となっている。都道府県別では、高齢化がもっとも進んでいるのは秋田県で33.8%だ。
一方、東京23区は22.0%で「若く活気にあふれていて、余裕のある地域」といわれている。しかし、東京23区内でも高齢化が進行している地域が存在する。その地域を「高齢者ホットスポット」と呼んで警鐘を鳴らすのが、東京23区研究所の池田利道所長だ。たとえば、東京23区でもっとも高齢化率が高い大田区東糀谷6丁目は60.6%となっている。
その背景には、何があるのか。池田氏に話を聞いた。
東京23区内にも存在する「限界集落」
――東京23区の「高齢者ホットスポット」について教えてください。
池田利道氏(以下、池田) まず、東京23区の高齢化率上位5地区を紹介します。大田区東糀谷6丁目(60.6%)、北区桐ヶ丘1丁目(58.5%)、世田谷区大蔵3丁目(55.1%)、北区桐ヶ丘2丁目(54.4%)、北区王子本町3丁目(53.1%)です。人口の50%以上を65歳以上の高齢者が占める地域を「限界集落」と呼びますが、これは地方だけでなく東京23区にも存在するということです。
これらの地区だけが特別なのかといえば、そうではなく、30位の渋谷区神宮前6丁目は41.2%、100位の墨田区京島3丁目でも33.1%です。東京23区全体の高齢化率は22%で、若い地域ではありますが、ホットスポット的に高齢化率の高い地域が存在しているということです。
東京23区には、3000を超える「町丁」があります。今回の調査では、500人以上が住む町丁(2870カ所あまり)を基に分析しています。
――では、なぜ東京23区でもホットスポット的に高齢化率の高い地域が生まれているのでしょうか。
池田 多くの場合、高齢化率が高い地区には団地が建ち並んでいます。なかには墨田区京島3丁目のように木造住宅の密集地もありますが、基本的には団地や共同住宅が密集している地域の高齢化率が高いのです。ただ、板橋区常盤台2丁目は高級住宅街ですが、高齢化率は33.4%と高く、93位にランクインしています。
東京というのは流動的な地域です。しかし、居住者の定住化が進展すると、当たり前ですが、その居住者は歳をとっていきます。そのため、「高齢者ホットスポット」のキーワードは「定住」です。
――なぜ、団地建設に伴う定住化が進展したのでしょうか。
池田 まず、団地について説明しましょう。1960年版の「国民生活白書」は、「団地族」の特徴について「大企業や官公庁に勤めるホワイトカラーが多く、所得水準も教育水準も高い。パン食、肉食など食生活の高級化も進んでおり、耐久消費財の保有率も高い」と分析しています。
当時、こうしたライフスタイルは憧れの的でした。「食寝分離」といって、食事する場所と寝る場所が分離している居住環境が広まりました。団地は商業施設やサービス施設も充実していたため、その周辺に住宅開発が進むという波及効果も生みました。こうした流れで、団地が建ち並ぶ地域が形成されていきました。