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孫崎享「世界と日本の正体」

米朝首脳会談、北朝鮮の核兵器完全廃絶は遠のく…米国、韓国での軍事的優位性を維持

文=孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長
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 会談の評価としては、想定された範囲を下回る合意といえる。北朝鮮は「2018年4月27日の『板門店宣言』を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島における完全非核化に向けて努力すると約束する」と、目標を設定したのみで、新たな合意はない。同じく米国側も「トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与えることを約束し」とあり、特に具体案に言及はない。

 米国のポンペオ国務長官は「CVIDが受け入れられる唯一の結果だ」と主張していた。事前協議でも直前まで、米国はCVIDを強く訴えた。これに対し北朝鮮は「米国も体制保証に関する具体的な期限や方法を示すべきだ」などと抵抗していた。

 しかし、12日の共同声明は「朝鮮半島の完全な非核化」との表現にとどまった。正恩氏が5月9日にポンペオ氏と会談した際、「余すところなく非核化する」と語ったのと比べて進展があったとはいえない。

 さらに「朝鮮半島の完全な非核化」と裏表の関係にあるのが、「北朝鮮の体制保障」である。事前では「朝鮮戦争の終結」が盛り込まれるのでないかと想定されたが、それはなかった。

 米国の北朝鮮問題専門家クリングナー(元CIA、軍情報局)は、今回の米朝首脳会談は従来より後退しており失望した、として次のツイートを投稿した。

<This is very disappointing. Each of the four main points was in previous documents with NK, some in a stronger, more encompassing way. The denuke bullet is weaker than the Six Party Talks language. And no mention of CVID, verification, human rights.>

4.今後の交渉の見通し

米朝首脳会談の成果を履行するため、米国と北朝鮮はマイク・ポンペオ米国務長官と北朝鮮の担当高官が主導して、できるだけ早い日程でさらなる交渉を行うと約束する」としているが、北朝鮮の場合、なんらかの新たな進展を見せるには、金正恩の積極的介入が必要である。今回、金正恩が前面に出てトランプと会談したが、「2018年4月27日の『板門店宣言』を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島における完全非核化に向けて努力すると約束する」以上に進めなかった。

 今後、ポンペオ米国務長官と北朝鮮の担当高官の話し合いでこれを超える事態がくる可能性は低い。つまり、北朝鮮が「核兵器の完全廃絶」に向かう可能性は低い。

 では、トランプ政権がそう判断した時、米国はどう行動するか。再度、チャールズ・コッホ研究所が6月4~6日実施した世論調査を見てみよう。

【問】北朝鮮が核開発プログラムを排除しなかった時の対応

【調査結果】
62%-外交的協議の継続
56%-金融的制裁の継続
48%-北朝鮮の軍事行動を抑止するため韓国における通常軍事力と核兵器の優位性を維持
36%-北朝鮮を世界に開かせるため、経済を政治から分離
17%-北朝鮮の核施設を破壊するため、爆撃、ミサイル攻撃を実施、
13%-陸上兵力で北朝鮮に侵入し、各施設を破壊するか掌握し、政権交代を図る

 おそらくトランプは、「外交的協議の継続」「金融的制裁の継続」「北朝鮮の軍事行動を抑止するため韓国における通常軍事力と核兵器の優位性を維持」を選択するであろう。
(文=孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長)

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