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渡辺雄二「食にまつわるエトセトラ」

大腸がんを患う日本人急増の理由…WHO、ハムやソーセージの発がん性に警鐘

文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト
大腸がんを患う日本人急増の理由…WHO、ハムやソーセージの発がん性に警鐘の画像1「Getty Images」より

 今や日本人の2人に1人ががんを発病しているといわれていますが、がんのなかでももっとも罹患者が多いのは大腸がんです。国立がんセンターが発表した「2017年のがん統計予測」によると、同年のがん罹患者数は101万4000人で、そのうち最多は大腸がんで14万9500人でした。次いで胃がんの13万2800人、肺がんの12万8700人となっています。

 日本で大腸がんが増えた最大の理由は、食生活の欧米化と考えられます。肉類を食べることの多いアメリカでは、1950年代から大腸がん罹患者が多かったのです。大腸にはさまざまな種類の腸内細菌が棲息していますが、そのなかの悪玉菌が肉類に含まれるたんぱく質を分解し、発がん性物質やがん促進物質をつくり出すことが大きな要因と考えられます。

 日本でも、食生活の欧米化に伴って牛肉や豚肉、加工肉などを食べる機会が増えました。その結果、アメリカ人と似たようなことが腸内で起こり、大腸がんが増えていると考えられます。では、大腸がんを防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。

ハム、ソーセージ、ベーコンを極力避ける

 第一に挙げられるのが、市販のハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉をできるだけ食べないようにすることです。

 2015年10月、世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)は、「ハムやベーコン、ソーセージなどの加工肉を食べると、大腸がんになりやすくなる」というショッキングな発表を行いました。これらの加工肉を1日50グラム食べると、結腸がんや直腸がんになるリスクが18%高まるとのことです。これは、世界の研究論文約800本を分析して得られた結論だといいます。

 ハムなどの原材料は、豚肉です。豚肉にはミオグロビンなどの赤い色素が含まれていて、それは時間がたつと酸化して黒っぽく変色してしまうため、次第にハムは茶色っぽくなってしまいます。

 メーカー側は「この色では売れない」と考えているようで、それを防ぎ、ピンク色に保つために、食品添加物のひとつである発色剤の亜硝酸ナトリウム(Na)を添加しています。亜硝酸Naは反応性が高く、ミオグロビンなどと反応して、鮮やかな赤い色素をつくります。そのため、黒ずむことがなく、美しい色を保つことができるのです。

 ところが、亜硝酸Na は反応性が高いゆえに、肉に多く含まれるアミンという物質とも反応して、ニトロソアミン類という物質に変化します。実はこの物質には強い発がん性があるのです。

 ニトロソアミン類は、酸性状態の胃の中でできやすい物質のため、亜硝酸Na を含んだハムなどの加工肉を食べると、体内でそれができる可能性が高いのです。また、加工肉自体にニトロソアミン類が含まれていることもあります。 

 さらに腸内でニトロソアミン類ができることもあります。肉類に含まれるたんぱく質は消化管で各種のアミノ酸に分解されますが、その一部は悪玉菌によってアミンに変化することがわかっています。そのため、それが亜硝酸Naと反応して、ニトロソアミン類ができてしまうのです。

 したがって、大腸がんになるリスクを減らすためには、発色剤の亜硝酸Naが添加されたハムやウインナーソーセージ、ベーコンなどを食べないように心がけることです。

プレーンヨーグルトを食べる

 大腸がん予防の第二の決め手は、プレーンヨーグルトです。前述のように腸内細菌の悪玉菌が、発がん性物質やがん促進物質をつくり、それらによって大腸の細胞が突然変異を起こして、がん化が起こると考えられています。したがって、善玉菌を含むプレーンヨーグルトを食べることで、悪玉菌を抑え、発がん性物質やがん促進物質が発生するのを防ぐようにするのです。

 プレーンヨーグルトはいろいろ売られていますが、まずおススメしたいのは、「小岩井生乳100%ヨーグルト」(小岩井乳業)です。原材料は、生乳(牛から絞ったままの乳)のみで、添加物は一切使われていません。善玉菌の代表格であるビフィズス菌が含まれています。

 生乳100%のため舌触りがなめらかで、酸味の少ないおいしいヨーグルトに仕上がっています。プレーンですが、そのまま十分食べられます。「おなかの調子を整える」というトクホ(特定保健用食品)でもあり、「生きたビフィズス菌(ビフィドバクテリウム・ラクティスBB-12)の働きにより腸内の環境を改善し、おなかの調子を良好に保ちます」という許可表示があります。

 次におススメしたいのが、「ビヒダスプレーンヨーグルトBB536」(森永乳業)です。この製品もビフィズス菌が入ったヨーグルトで、「おなかの調子を整える」というトクホです。人での臨床試験で、排便回数や便性状の改善が認められているといいます。なお、原材料は生乳と乳製品(生乳を原料としてつくられるクリームや脱脂乳、脱脂粉乳など)のみで、添加物は使われていません。

 もうひとつ、「明治ブルガリアヨーグルトLB81プレーン」(明治)もおススメできます。ビフィズス菌とならぶ善玉菌の代表格である乳酸菌を含んでいます。原材料は、生乳と乳製品のみ。「おなかの調子を整える」というトクホです。

 使用されているLB81乳酸菌は、腸内の悪玉菌が増えるのをおさえて、腸内環境を整える働きがあります。女子大生106人にこの製品を食べてもらったところ、便通がよくなり、便秘が改善されたといいます。

 これらのプレーンヨーグルトを続けて食べることで、ビフィズス菌や乳酸菌を増やし、悪玉菌が増えるのを抑えることができれば、発がん性物質やがん促進物質の発生を減らすことができ、がんになるリスクを減らすことができると考えられます。

 いずれのプレーンヨーグルトもスーパーなどに売られていて、値段も高いものではありませんので、手軽に入手できます。大腸がんが心配な方は、食べ続けてみるとよいでしょう。
(文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト)

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

1954年9月生まれ。栃木県宇都宮市出身。千葉大学工学部合成化学科卒。消費生活問題紙の記者を経て、82年からフリーの科学ジャーナリストとなる。全国各地で講演も行っている

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