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岡田正彦「歪められた現代医療のエビデンス:正しい健康法はこれだ!」

唾液、極めて危険、病気伝染のリスク大…プロ野球選手のつば吐き、即刻禁止すべき

文=岡田正彦/新潟大学名誉教授
唾液、極めて危険、病気伝染のリスク大…プロ野球選手のつば吐き、即刻禁止すべきの画像1
「Getty Images」より

 プロ野球ファンの皆さん、選手がつばを吐いているシーンがテレビ中継で大写しになったりしますが、気になりませんか? プロ野球の本場、米国でも「実は気になっていた」という人が意外に多いようで、最近、そんな話題がメディアでも少しずつ取り上げられるようになってきました。

 プロ野球選手は、なぜ試合中につばを吐くようになったのでしょうか。米国では1950年代に「噛みタバコ」なるものが選手の間で大流行しました。タバコの葉をさまざまな基剤と混ぜ合わせ、口の中で噛み続けるという嗜好品です。噛んだあとの唾液は有毒ですから、吐き出すしかありません。しかし「口腔がん」などの原因になることもわかり、さすがにメジャーリーグでは禁止となりました。

 代わって流行しているのが、ヒマワリの種とチューイングガムです。前者は、乾燥した種をポケットにたくさん入れておき、ゲーム中に食べ、殻をペッペッと吐き出すのですが、試合が終われば、球場はつばがついた不潔なごみで溢れます。

 メジャーリーグでは、ピッチャーがボールに自分のつばをつけるスピット(つば)ボールなる投法もありました。しかし危険球になりやすく、死者も出たことから、いまは禁止になっています【注1】。

 言い訳もいろいろあって、イニングがかわるごとに、あるいは打席に立つたび、気持ちを切り替えるのに役立っていると主張する人もいます。長い時間、運動を続けていると、唾液が口の中でMUC5Bという硬いムチン状物質に変わり【注2】、飲み込みにくくなるため、吐き出すしかないという、もっともらしい説もあります。

 しかし長時間、体を動かし続けるスポーツはいくらでもあります。プロ野球のテレビ中継を見るたびに思うのは、ほかのスポーツではどうなのか、ということです。サッカーでは見かけますが、同じ屋外スポーツでもゴルフやテニスでは絶対にありえないですね。

 10年ほど前、プロゴルファーのタイガー・ウッズ選手がコース上でつばを吐き、たまたまテレビに映し出されました【注3】。最終日、2つのボギーをたたいてイライラしていたときでしたが、ウッズ選手にはただちにペナルティーが科せられました。ゴルフでは、プロもアマもプレー中は品位を保つという規約があり、それに反したからでした。

 テニス界では、かつてのスーパースター、アンドレ・アガシー選手が同じ理由でペナルティーを科せられましたが、後日、偶然の出来事でありマナーに背いたものではなかったと判定されています【注4】。

 学校のグランドで開催される運動会などに参加していて、突然、砂ぼこりが舞い、口の中が砂だらけになったという経験は誰にでもありそうです。しかし、専門的に整備されたプロ野球の球場で、砂ぼこりが舞うシーンはほとんど見たことがありません。ましてや、多くはドーム球場なのです。

 あるメジャーリーガーは引退後、バスケットボールに転向しましたが、「つばを吐くという気持ちにはならなかった。だって自宅のキッチンの床に、つばをする人はいないだろう」と語っています。

 プロ野球選手が試合中にガムを噛んでいるのも、おかしな話です。勤務中にガムを噛むのが許される職場はほかにないからです。それもこれも、すべてプロ野球選手の甘えではないでしょうか。

唾液検査のほうが有効

 コロナ禍で気になるのは、つばで他人に病気が移ったりしないのかということです。新型コロナのPCR検査を行うため、鼻に綿棒を入れてサンプルを採取しているシーンをニュース映像でよく見かけます。最近は、集団で検査を実施することが多くなり、唾液を採取する方法も普及しています。この2つの方法のどちらが有効なのかを比べる研究が米国で行われました【注5】。その結果、唾液のほうが陽性を見逃す割合がずっと少ないことがわかりました。つまり感染者の唾液は、それだけ危険なのです。

 某球団の助っ人外国人Wは、つば吐きの多い選手ですが、最近、「PCR陽性だった」と報じられました。「球場を早く消毒してほしい」と思った人も多かったのではないでしょうか。

 プロ野球コミッショナーには、即刻、「プレー中のつば吐き禁止令」を出してほしいものです。もちろん罰則つきでお願いします。夕食をとりながら、あるいはビールを飲みながらのナイター観戦を楽しみにしているファンにとって、選手がつばを吐くシーンは嫌です。全国のちびっ子ファンが見ていることもお忘れなく。
(文=岡田正彦/新潟大学名誉教授)

参考文献
【1】   Willingham AJ, There’s no crying, er, spitting in baseball anymore. But why was it a thing in the first place? CNN, Jul 1, 2020.
【2】   Thomsson KA, et al., MUC5B glycosylation in human saliva reflects blood group and secretor status. Glycobiology 15:791-804, 2005.
【3】   Tiger Woods fined by European tour for spitting. Fox Sports, Feb 14, 2011.
【4】   Elder A, Why do athletes spit so much? A Juicy investigation. MEL Magazine 2021.
【5】   Teo AKJ, et al., Saliva is more sensitive than nasopharyngeal or nasal swabs for diagnosis of asymptomatic and mild COVID-19 infection. Sci Rep 11(1):3134, 2021.

岡田正彦/新潟大学名誉教授

岡田正彦/新潟大学名誉教授

医学博士。現・水野介護老人保健施設長。1946年京都府に生まれる。1972年新潟大学医学部卒業、1990年より同大学医学部教授。1981年新潟日報文化賞、2001年臨床病理学研究振興基金「小酒井望賞」を受賞。専門は予防医療学、長寿科学。『人はなぜ太るのか-肥満を科学する』(岩波新書)など著書多数。


岡田正彦

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