富山・高岡工芸高校の剣道部員をボコボコにした謎の保護者は誰なのか?部活指導の現実の画像1
富山県立富岡工芸高校公式サイトより

 今月7日に富山県立高岡工芸高校(高岡市)で剣道部の男子部員2人が同校の保護者に暴力を受けたとされる問題。地元局のチューリップテレビが12日、『武道場に入ってきた男性が生徒に暴行「だらけている」』とスクープしたことを皮切りに、インターネット上ではこの保護者と学校の管理体制に対する批判が殺到した。13日には同県教育委員会と高岡工芸高校が会見を開き、事案の経緯を説明する事態となった。

柔道部を見学後、剣道部員に暴行

 各社報道や県教委などの発表によると、柔道部の見学のため学校を訪れた40代半ばの男性に対し、部活が終わって帰宅準備をしていた剣道部員の男子生徒2人が挨拶をしたところ、その態度が武道をする者としてふさわしくないなどと激高。同部員15人に対して約20分間にわたって叱責を繰り返した。その後、男性は男子部員2人に防具をつけさせ、面や胴を複数回にわたって足で踏みつけた。それを見ていた同部顧問の教員が静止したという。

 一連の事態で、女子部員1人が恐怖のため過呼吸になった。一方で、男性は「暴力ではなく、武道の指導だった」などと語っているという。また、被害を受けた生徒は被害届の提出を検討しているという。

当該保護者は柔道部員の保護者でもなかった

 県教委県立学校課の担当者は「剣道部員に暴力を振るった男性が高岡工芸高の生徒の保護者ではあることは事実です。しかし、そもそも見学に行った柔道部員の保護者ではありません。もちろん剣道部員の保護者でもありません。保護者として学校所定の見学手続きに従って校内に入り、柔道部を見学していました」と説明する。

 つまり部活動と直接関係のない保護者が柔道部の見学に行き、剣道部員に“武道の指導をしようとした”ということなのだろうか。再発防止策として、県教委は全ての県立高校に対し、来校者に対するチェック体制の強化を文書で通知したという。同校に関し、高岡市議会関係者は話す。

「保護者が誰なのかは、関係者はわかっていることですが外部の方にはお話できません。

 高岡工芸高校は明治に開校した伝統校です。戦後、武道系の部活動が活発です。今回、保護者の男性から暴力の被害を受けた剣道部は、今年5月の富山県高等学校総合体育大会で男女とも団体2位の実績を残した強豪です。

 また男性が見学していた柔道部も市柔道連盟に多くの役員を輩出している古豪で知られています。武士道を危険視したGHQの指示で、柔道を含む日本の武道全般が消滅の危機にあった昭和20~30年代、同好会活動に過ぎず、満足な数の畳がなかった同校の柔道部員が自らの小遣いを出し合って畳を買いそろえようとしてまで柔道をやろうとした話は、県内の柔道関係者間では美談として語り継がれています。

 一方で、その練習やしごき、先輩後輩関係の厳しさもまた伝統として長らく受け継がれていました。少なくとも、私の友人の同校柔道部OBは今でも“部の先輩の命令は絶対”です。

 しかし、ここ数年でそうした雰囲気もだいぶ変わりました。少なくとも学校教育での過剰な精神修養や体罰はご法度になりつつあります。一方で、地元や県内だけに限らない話なのかもしれませんが、昔の“しごき”が至上だと考えている武道系部活のOB・OGは数多くいます。

 地方はどこでも“地域全体で子どもたちにスポーツを教える”のは当たり前でしょう。良い意味でも悪い意味でも、監督でもコーチでもない大人が小学生のスポーツ少年団や中学、高校の部活に顔を出し、指導することもよくあることです。県教委が再発防止策としている来校者のチェック体制強化で、今回のような問題の本質的な解決になるかはわかりません」

 2013年に発覚した女子柔道強化選手への暴力問題を端緒に、柔道界のみならずスポーツ業界全体で暴力やパワハラまがいの指導を禁じる流れになりつつあるが、社会全体の意識改革は道半ばなのかもしれない。

(文=編集部)

 

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