病院で脇の下の温度を測るのは、脳や心臓の温度を簡便に測ることができないので、あえて測りやすい方法のひとつとして利用されています。欧米などでは実は肛門に体温計を入れます。直腸検温法といいます。脇の下よりも正確です。また婦人体温計では、通常口の中の温度を測定します。
体温と病気
さて、本題です。極論君は最近のメディアなどの「冷え症はいろいろな病気になりやすい。がんにもなりやすい」といった論調を真に受けています。そこで常識君が質問します。
「では、寒い国の人は暖かい国の人よりも、がんになりやすいのですか? そんな話はあまり聞いたことがありません」
極論君が反論します。
「体表面の温度は外気温に影響されるでしょうが、体温は個人によって差があります」
そこで常識君が再度質問します。
「では顔などの衣服で覆われない皮膚の温度は、当然に外気温とほぼ比例しますよね。そうであれば、寒い国ほど少なくとも皮膚がんは多いはずですが、そんな話も聞きませんね」
体温は基本的に歳を取ると徐々に下がってきます。代謝が落ちたり筋肉量が減るためだといわれています。しかし、老人保健施設などで体温が低いお年寄りがみんながんになっているということも聞きません。そうですね。人はいろいろなのです。
もっとも、がんになれば、体温は高いほうが低いよりも闘病力は増すと思われています。少なくとも、がん細胞を温めて退治する治療法はありますが、冷やして退治する治療法は極端に冷やして冷凍凝固するなどの場合のみです。温めるときは数℃温めるとがん細胞は障害されます。
つまり、がんになるかならないかは、あまり体温とは関係がないけれども、がんになったら体温は低くないほうが良さそうです。
では、どうやって体を温めればよいのでしょうか。ハイパーサーミアという、がんを温めて治療する機械は保険適用になっています。また、漢方薬で体の芯から温めることも可能です。つまり冷え症の方にも漢方は有効ですので、主治医にご相談ください。
発熱を楽しむ
次は非常識君の「発熱したらすぐに解熱する作戦をとる」という考え方についてです。発熱は通常の体温よりも体が熱くなることで、体が闘病体勢に入っていることを意味します。ですから、病院では体温を測るのです。少なくとも、脇の下である程度の温度が記録されれば、大切な深部体温はもっと高いであろうと推測できるからです。