“健康食品幻想”は捨てるべき
――最近はテレビでも健康食品を扱っていますが、これについてはどう思われますか。
梅垣 テレビの健康食品情報については、もはやバラエティとして見たほうがいいでしょう。決して、科学的に検証するような内容ではないからです。
昔、昼間の番組で、人気司会者と専門家が「これを食べれば、こんな効果がある」と毎日のようにやっていました。確かにそれぞれの食品には一定の効果はあるのかもしれませんが、同じ食品を摂りすぎれば偏食になるだけです。これは今も変わっていません。
それに、我々が知り得る食品の定説は数年で変化する場合があります。私たちが知っているのはあくまで現時点の情報であり、将来変わる可能性があります。その代表例が、動物性のバターとトランス脂肪酸を含むマーガリンの関係でしょう。どちらも少し摂取する程度では問題にならないのですが、摂取量を考えずに「良い・悪い」といった両極端な考え方がされてしまっています。
――結局、私たちは健康食品とどうつき合えばいいのでしょうか。
梅垣 たとえば、いくら健康にいいからといって、同じものを食べ続けることは偏食や過剰摂取につながります。本来、食品は味や香りを感じて食べるものであって、そのような実感がないものは食べても元気がでません。たとえば、病院の流動食だけでは食べた実感もなければ元気も出てこないでしょう。
市販のサプリメントや健康食品がすべて悪だとは思いませんが、食品との本来の付き合い方は、味・色・香りを感じながら、いろいろな食品をおいしく食べることです。それによってバランス良く栄養を摂取することができ、心にも体にも良いに決まっています。
おいしさを味わうことによって満足感が高まり、体も健康になっていくと考えます。もし「健康食品やサプリメントを利用しよう」と思うときは、その実態をよく理解し、広告の内容を鵜呑みにしないことが必要でしょう。
個人的な考え方ですが、健康食品に1万円を出すのであれば、スポーツジムに行って運動して汗をかき、おなかがすいたらおいしい物を少しずついろいろ食べるほうがいいと思います。これに勝る健康対策はないでしょう。健康食品に大きな幻想を抱くべきではありません。
(構成=長井雄一朗/ライター)