そもそも、イソプロピルメチルフェノールなどの殺菌剤によって皮膚の細菌を殺すということは、安易に行ってはならないのです。人間の皮膚には、表皮ブドウ球菌などの皮膚常在菌が表面を覆うように生息していて、それは病原菌の感染を防ぐ、いわばバリアの役目を担っています。
それを殺菌剤によって殺してしまうと、皮膚が無防備な状態になって病原菌の侵入を受けやすくなってしまうのです。
薬用ボディウォッシュとともに薬用クリームやデオドラントスプレーもドラッグストアなどに並べられていますが、それらも多くは有効成分としてイソプロピルメチルフェノールが配合されています。また、パラベンやBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)などの表示指定成分だったものも含まれています。
BHTについては「マウスへの経口投与で肺がんが発生する。またラットへの2世代経口投与で肝臓がんの発生率が増大する」(泉邦彦著『有害物質小事典』研究者刊)との報告があり、発がん性が疑われています。
薬用クリームは直接肌に塗り、デオドラントスプレーは肌にスプレーするので、成分のイソプロメチルフェノーやパラベン、BHTなどが肌に長時間残留することになるので、すぐに荒い流す薬用ボディウォッシュよりも影響が強く出ると考えられます。したがって、安易な使用は避けたほうがよいのです。
忌み嫌われている汗臭ですが、その原因となる汗には、主に2つの重要な役割があります。ひとつは体温調節です。気温が高くなると、それに伴って体温も高くなる傾向にあります。そこで、汗をかくことで熱を体の外に排出し、体温が上がりすぎることを防いでいるのです。
また、汗の中には体内で不要となったアンモニアなどの老廃物が含まれています。汗をかくことによって、それら有害な老廃物を排出しているのです。
汗をかけば誰でも多少は臭いがします。ところが、清潔志向の異常ともいえる高まりから、少しでも汗臭がするとそれを必要以上に不快に感じたり非難する人が増えているようです。
しかし、汗をかくのは体を維持するために必要・不可欠なことなのです。ですから、みんながその点を認識し、多少の汗臭については寛容にならなければならないでしょう。
もちろん、汗をかいた服を何日も着続けて周囲に悪臭を放つというのは、やめるように心がけなければなりません。
脇の下や胸などの汗がどうしても気になるという人は、ハンカチや小さめのタオルを水道水で湿らせて、時々拭くようにすればよいでしょう。水で冷やすことで汗を抑えることができますし、また水道水には残留塩素が微量含まれているので、細菌の増殖を抑えてもくれます。
(文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト)