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「初音ミク」長期ブームを支える、販売元クリプトン社の“驚異的な”ライセンス戦略?

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 だから、ボカロPさんは、「これは、我慢しなければならないことだ」とも、おっしゃっていました。これもまた、「ピアプロの厳しい掟」とも言えると思います。

 あと、これはルールでもなんでもないのですが、私からの個人的なお願いとしては、

(5) ピアプロの作品を利用してつくった作品なら、ちゃんとピアプロに投稿しようね!

とは言いたいです。

 他の人のN-1次の著作物を利用して、自分のN次の著作物をつくって、それを世界に羽ばたかせているなら、当然自分の作品も、他の人が利用できる状態に置いてほしいと思うのが人情です。「人のものを使ったなら、自分のものも使ってもらう」、これが正しい姿であり、ピアプロの理念だと思うからです。

では、最後にまとめたいと思います。

「ピアプロ」とは、

(1)作品が単に展示されているサイトにとどまらず、
(2)その作品を使って、自由に別の作品を創作することが許されており、
(3)その創作された作品は、他人の著作権との調整がすでに完了しており、
(4)誰からもどこからも文句の出ない、世界に公開可能な作品の創作を可能とする、
 
 N次著作物問題を一元的に解決する「ピアプロクリアランス」を発動する、コンテンツ投稿サイトです。

「初音ミク」を提供するクリプトン社は、複雑で難しいコンテンツビジネスの著作権の問題を逆手に取って、

・著作権の保護と利用の利害関係を調整するライセンス(PCL)を創成し、
・創作者に、大量の著作物の利用環境と新しい創作意欲を促す場(ピアプロ)を育成し、

 ビジネスモデルとして組み上げました。

「初音ミク」ブームが、コンテンツビジネスとしては驚異的に長い期間(5年以上)も続き、そして、今なお発展を続けているのは、関係者全員にメリットを与えるために周到に準備された法律上の仕組みが、精緻に動き続けているからなのです。

 では、次回は、クリプトン社が仕掛ける、さらなる2つの仕組み–「創作ツリー」と「ピアプロリンク」についてご説明をして、「初音ミクと著作権」シリーズ最後のまとめをさせていただこうと思います。
(文=江端智一)

※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナーへお寄せください。
※後編へ続く。

【註1】投稿可能な他社キャラクターについて http://piapro.jp/license/other_character_guideline

【註2】「会員は、会員コンテンツをアップロードする際にライセンス条件を選択することができるものとし、他会員がライセンス条件の範囲内で会員コンテンツを再複製・再頒布することに合意するものとします。」
http://piapro.jp/user_agreement/

【註3】厳密にいうと、「許諾しない」というライセンスを選択することも可能です。

【付録:クリプトン社に提出した江端の質問と、そのご回答】

※今回のコラムに関係のある部分のみ抜粋。

Q6:PCLは、3次以上の創作まではサポートしていない(GPLライセンスのような規定ぶりではない)が、その理由は何故かご教示いただけますでしょうか。また、「初音ミク」を包含する全ての著作物に効力を発生させるようなライセンスとすることも取り得たと思うのですが、そのようにしなかった理由があればご教示いただけますでしょうか。
Q7:公開サイト「ピアプロ」は、PCLの及ばない3次(以上)創作の発表の場は、著作権侵害に直接該当しないまでも、その予備的行為(間接侵害、または「おそれ」)に該当しないかご教示いただけますでしょうか。

BusinessJournal編集部

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