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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

中国・習近平、後継者不在の揺るぎなき完全独裁体制へ…「チャイナセブン」刷新

文=相馬勝/ジャーナリスト

 香港メディアのなかには「第6世代の党最高指導部入りはなし」と報じるところもあるが、それはかつてポスト習近平の最有力候補だった胡春華・広東省党委書記を外す方便ともいえる。すでに、やはりポスト習近平の最高指導部入りがうわさされていた孫政才・元重慶市党委書記が汚職問題などで党籍はく奪され、失脚しており、胡氏も習氏から狙い撃ちされているとの見方が強いからだ。

 香港メディアは「陳氏の場合は、政治局員すら経験しておらず、政治局常務委員としては役不足」と報じているが、実は習氏が2007年の第17回党大会で最高指導部入りした際も、政治局員ではなく、その格下の中央委員と、今の陳氏と同じ状況だったことを考えれば、最高指導部人事といえども、最高指導者の習氏の判断次第という要素が強いといえる。

毛沢東然とする習近平

 習近平指導部の新体制でもっとも重要なのは、ナンバー2の李克強首相を牽制するため、ナンバー3に誰を起用するかだ。さらに、習氏自身と李氏、さらに前述した陳氏を除いた4人のメンバーを誰にするかだ。

 まず、ナンバー3問題は、官房長官役としてこれまでの5年間、習氏を支えてきた栗戦書氏が順当だ。栗氏はこれまでのナンバー3だった張徳江・全国人民代表大会(全人代)常務委員会委員長のあとを襲って、同委員長職を引き継ぐことになる。

 また、「反腐敗」の旗を先頭で振り続けてきた王岐山氏の代わりに、趙楽際氏が党規律検査委書記に就任し、王氏同様、汚職摘発の名を借りて政敵を追い落とす“汚れ役”を引き受けることになる。

 残る2人の常務委員は前述したように汪氏と王氏の両氏となる可能性が高い。汪氏は胡春華氏同様、中国共産主義青年団出身だが、途中で変節し、いまや習氏に忠誠を誓っている。王氏は習氏のブレーンとして、これまでも政治、外交の重要な政策を取り仕切った実績があり、チャイナセブンには申し分がない実績を有する。

 このようにみてくると、今後5年間の習近平新指導部体制は盤石ともいえる。ただ、ひとつ不安定要因があるとすれば、政治的な実力が不透明な陳氏だろう。いわば、陳氏は唯一の若手であり、習氏の「後継者」的存在だけに、その立場を勘違いして力を誇示する場面が出てくれば、「出る杭は打たれる」ことも考えられよう。

 かつて毛沢東の後継者に指名された林彪副主席がクーデターを失敗し命を失ったほか、最高実力者だった鄧小平の意を受けて党総書記に就任した胡耀邦、趙紫陽両氏が相次いで失脚した例もあるだけに、チャイナセブンとしての陳氏の立場は極めて不安定となることも予測できる。

 このため、習氏はあえて「後継者」然とした陳氏の登用を土壇場になって見送ることも考えられる。そうなれば、上海市党委書記の韓正氏の常務委員会入りの芽も出てこよう。
 
 いずれにせよ、いまや毛沢東然として最高権力者として君臨する習氏は党主席制度の復活も画策しているだけに、その成否次第ではチャイナセブン人事もいくぶんかの調整がなされることも考えられる。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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