投票まで残り1日となった第48回衆議院議員総選挙。小池百合子東京都知事が希望の党を立ち上げ、民進党が分裂するなど、野党側が大荒れのなか、自民党・公明党の与党側は安定した選挙戦を展開している。
衆議院解散当初は、自民党は大きく議席を減らすと見られていたが、野党陣営の自滅状態に陥ったこともあり、いまや自公合わせて300議席は確保するとの見方が広がっている。
そんななかでも、苦戦が強いられる選挙区は全国に数多くある。それらの地区には、自民党のなかでも特に人気の高い弁士が応援に駆けつけ、一発逆転を狙うジョーカーの役割を果たしている。
自民党の一番人気弁士といえば、小泉進次郎筆頭副幹事長である。整ったルックスと爽やかな笑顔で、女性からの人気が高いだけでなく、優れた弁舌によって男性からの支持も強い。それだけに、全国各地の自民党候補者は、小泉氏に応援に来てほしいと嘆願している。
10月20日、投票まであと2日に迫り、選挙戦は最終盤を向かえるなか、小泉氏は秋田や栃木、神奈川など相変わらず応援に飛び回っていた。今回は、小田急線・新百合ヶ丘駅南口で行われた中山展宏氏の応援に駆けつけた際の模様をレポートしたい。
16時45分から小泉氏の演説があるとの情報を聞きつけた買い物帰りの主婦らを中心に、16時過ぎから新百合ヶ丘駅南口には人が集まり始めた。16時30分頃には、演説場所付近はほとんど歩けないほどに人で埋め尽くされた。大雑把に見積もっても、1000人は超える人だかりとなっていた。実は、前日も中山氏は新百合ヶ丘駅南口で演説を行っていたが、足を止めて耳を傾ける人はごくわずかだったので、この群集の目当てが小泉氏であることは明白だ。
中山氏は、神奈川9区で過去3回衆院選に出馬しているが、いずれも笠浩史氏(民主党→民進党→希望の党)に敗れている。2012年と14年の選挙では、小選挙区で敗退した後に比例復活したものの、3期目はなんとしても小選挙区での勝利を果たしたいと必死の選挙戦を行っている。21日夕方には麻生太郎副総理が応援に駆けつける予定で、裏を返せばそれだけ厳しい情勢であることがうかがえる。
演説会場にいた女性に話を聞いたところ、「ここは笠さんの選挙区だから、中山さんに勝ち目はないわよ」とバッサリ切り捨てられた。それでも、この女性も小泉氏を一目見たいからと小雨の降る中、傘もささずに立ち続けていた。
予定時刻を数分過ぎ、司会者が登壇して演説会の開会を宣言。応援弁士として川崎市議会議員らが立ったが、聴衆はあからさまに小泉氏を求めていた。7人ほど連続して応援弁士が立ったが、そのたびに「まだ小泉は出てこないのか」とざわつき、弁士たちにもそのフラストレーションは伝わっていた。
最後の応援弁士が降壇し、司会者が「みなさん、お待たせしました」と告げると、聴衆が一斉にスマホをかざし、撮影の準備をした。そこに候補者本人である中山氏が現れると、ためいきと苦笑が流れた。大群衆に囲まれた中山氏は力を込めて演説を始めたが、ちらほらと帰る人が見受けられた。なんとも滑稽な光景だった。
中山氏が演説を始めてから5分ほどしたところで、小泉氏が現場に到着。中山氏そっちのけで小泉氏にカメラが向けられた。