また10月には女子中学生が援助交際でAIDSに感染していたことが報じられ、社会に衝撃を与えた。現在16歳の少女は、中3だった昨年8月から斡旋グループを通じて援助交際を開始。1回あたり15万~20万ウォン(1万5000~2万円)で約4カ月間続けたが、昨年末から泌尿器科の治療を受け始めた。そして今年5月、血液検査によってHIV陽性と診断されたという。
「少年法廃止」を求めて湧き上がる世論
集団リンチ事件が新たに発覚するたび、SNSでは加害者の個人情報が即座に出回る。釜山の事件でも加害者たちの自宅に「死ね」「自殺しろ」といった電話が殺到し、警察が周辺をパトロールする事態に至った。
一連の事件ではまた、警察をはじめ行政の不手際も叩かれている。釜山市、江陵市、天安市のケースでは事件後すぐ警察に通報があったにもかかわらず、メディアで騒がれてからようやく本格的に捜査を始めた形だ。女子中学生のAIDS感染も学校が警察や教育委員会に報告せず、捜査が遅れて感染源の特定が困難になった。
少年法もやはり激しい集中砲火の的だ。韓国も14歳未満は刑事処罰の対象外、18歳未満は懲役の上限が15年ないし20年に制限される。だがその改正を飛び越して廃止を求める請願に、40万人近い市民の賛成が寄せられた。問題を取り上げる報道でも「厳罰化はやむなし」の論調が優勢だ。
「公憤」にかられる世論と「厳罰化」の行方
こうした激しい世論に押されてかどうか、司法の対応も厳しい。釜山の事件では14歳少女3人のうち2人を逮捕、1人を書類送検。江陵では15歳と17歳の少女を逮捕。牙山では16歳少女2人のうち1人に懲役3年の実刑、1人を家裁送致。ソウルでは14歳少女6人を書類送検、14歳未満の少女2人を家裁送致。大田では14歳少女1人を書類送検、14歳未満の少女3人を家裁送致。天安では14歳少女2人に懲役10カ月~1年の実刑判決。そして光州では17歳と18歳の少女が逮捕された。また仁川の小学生殺人事件では、9月の公判で現在17歳の主犯に懲役の上限20年が言い渡されている。
「公憤」にかられ、非行少年少女への処罰強化を求める韓国の世論。一方で「他人への共感が著しく欠けている」ことを事件の背景とし、保護者に対する教育が必要と説く専門家もいる。日本でも取り沙汰される少年犯罪への「厳罰化」が対策になるのかどうか、隣国の動向に注視したい。
(文=高月靖/ジャーナリスト)