起訴独占主義
日本では起訴されると、99.9パーセントが有罪になる。先進諸国では、有罪の率は7~8割だ。これに関して日本では、無罪になりそうなものはそもそも起訴していないと言われている。
「起訴独占主義といって、起訴するかしないかは、検察官が決めます。裁判所が『こいつは悪い奴だから起訴しろ』などと言うことはできません。検察官というのは検察庁の職員ですけど、会社みたいに上命下服で上からの命令で起訴したりしなかったりするということではない。一人ひとり独立していることになっているんです。犯人でも起訴しない、明らかに人をナイフで刺して殺してるんだけど、起訴しないということもできます。しかし、それでは賄賂をもらって起訴しないということもできてしまいます。
それだと困るので、検察官独立の原則の一方に、検察官一体の原則があります。起訴不起訴に関する検察官がつくった書類を持って行って、決済官の判子をもらわないといけないんです。検察官としては有罪に持っていくことが仕事なので、『微妙だな』というのは起訴しないです。証拠が弱くて裁判官を説得できないと思ったら、不起訴で釈放しちゃうということはけっこうあります。
起訴しないと判断する理由のひとつに、精神障害があります。裁判になって精神鑑定をしなくてはならないとなると、弁護人のほうからもいろいろと言われる。その結果、裁判が長引く、場合によっては無罪もしくは減刑などになれば、検察庁としての顔が立ちませんから。いろいろな理由で、薬関係とか万引きとか、小さな犯罪だと、不起訴にしないということはけっこうあります。強盗や殺人などの重大犯罪になってくると、なかなか起訴しないということはできませんが、それもゼロではありません。だから、警察で事件として認知した件数と、有罪となった件数を比較するなら、それはとても99パーセントなんて数字にはなりませんよ」
検察官の起訴のあり方
2013年の日本映画『凶悪』(原作『凶悪 -ある死刑囚の告発-』<新潮文庫/「新潮45」編集部)のモデルとなった「上申書殺人事件」の中心人物である後藤良次死刑囚は、最初に行った殺人で逮捕されたが不起訴となり、それで自信を付けたと語っていた。