新しい市民図書館が開館する南海市駅の再開発は、巨額の補助金を投入して市民が集まる受け皿を建設するハコモノ主体の都市計画なのに対して、有馬氏が取り組んできた「まちづくり」は、それとは対称的な位置づけにある、市民が主体の地道な活動のはずだ。
そうした地元市民による地道な活動を担ってこられた人物が、“雰囲気重視”で市民の社会教育は二の次で運営するツタヤ図書館を高く評価するだろうか。筆者が疑問に思っていると、ツタヤ図書館を誘致した自治体の市議会関係者から、こんな言葉を聞いた。
「あのCCCの増田社長はね、同じ大学出身の人たちの間では、ものすごく評判がいいんですよ」
この言葉を受けて調べてみたのが、同窓会人脈だった。CCCの増田宗昭社長は、出身校である同志社大学の同窓会組織で、役職を務めたり、同窓会の集まりで講演を行うといった活動を積極的にしていることで、つとに知られている。
増田社長と同じ同志社大学の出身である有馬氏も、調べてみると、地元和歌山県の同窓会組織で役員を務めていたことが判明した。だとすれば、どこかで接点があるのではないか。ある関係者は、こう囁く。
「有馬さんは、まちづくりの世界では名前の知られた人ですから、CCCがもし和歌山市を狙っていたのなら、選定会議の前に、接触していないほうがおかしいですよ。もともと2人が知り合いだった可能性はあります」
仮にそうであれば、有馬氏がCCCを贔屓した採点を行っている蓋然性は高まる。とはいえ、そんなことを証明する手立てはない。そんななかで、降って湧いた有馬氏退任のニュースである。あとはもう、本人に直接質問をぶつけるしかない。そこで平日の夜遅く、有馬氏の自宅の電話にかけてみたところ、ご本人が出られた。
有馬氏に直撃
以下、その際の一問一答を紹介する。
--市役所をご退職されたと聞きましたが、次の転職先は決まっているのでしょうか?
有馬氏 いえ、まったく決まっていません。
--まだ、定年前ですよね?
有馬氏 はい、少し残して辞めましたから。
--和歌山市のまちづくりの中心人物が辞められたことに驚いています。
有馬氏 そうなんですか。実は、いろいろ考えるところがありまして。ちょっと体調も思わしくなかったので。
--図書館の件を調べていまして、情報開示された文書を見ているのですが、14年くらいからCCCに決まるまでの流れのなかで、有馬さんのお名前は出てきません。
有馬氏 私は図書館の担当ではないですから。
--市が、南海電鉄と定期的に開催している調整会議には出ていましたか?
有馬氏 出ていませんね。
--それなのに、指定管理者がCCCに決まる17年11月の選定会議には、委員として出席されていましたね。
有馬氏 はい。選定委員として出てくれと言われて、出た記憶はありますね。