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松崎のり子「誰が貯めに金は成る」

スマホ決済アプリで“買い物させられ続ける”人々…あくまで店側の「客囲い込みツール」

文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

 高還元率のキャンペーンは、消費者のためではなく加盟店へのサービスとも言える。たとえば、キャンペーンの期間内で、家電量販店、ドラッグストア、コンビニ――と対象を変えていく手法が取られる。素直にキャンペーンに乗っかって、さまざまな小売り店で買い物をし、そこで還元を受けたポイントを原資に、また別の業種で消費をする。消費者はトクしているようで、消費させられているという側面を忘れてはいけない。

 10月からのキャッシュレス決済に対するポイント還元は、我々の負担軽減ではなく、増税で落ち込んだ消費を喚起する政策だということは、間違えないでおくべきだ。

政府のポイント還元策は不発に?

 乱立する決済アプリの大盤振る舞いは止まらない。必ず、どこかが10%、20%還元のキャンペーンを行っている。9月までに自社のアプリをダウンロードして使ってもらい、ポイントを付与して、それを原資に10月以降も買い物してほしいからだ。逆に言えば、10月以降のキャンペーンの様子が見えない。釣った魚に、どこまで餌をやる気なのだろうか。

 さらに言えば、10月からの政府のキャンペーンはショボいものになりそうだ。20%還元という数字に見慣れた我々が、最大5%、しかもデパートや家電量販店は対象ではなく、中小規模事業者店舗での買い物での還元と言われて、魅力を感じるだろうか。賢いユーザーなら10月が来る前にめぼしい買い物を済ませているのでは、と思わなくもない。しかも、夏休みやボーナス商戦も終わった後だ。大物買いの余力が残っているかは、はなはだ疑問だ。

スマホ決済に向いている人・向いていない人

 各種決済アプリの20%近い還元キャンペーンは、9月いっぱいまでは定期的に行われるだろう。それを当て込んで買い物をするなら、計画的に買うべきものを洗い出そう。今日は家電、明日はコンビニ……では、事業者側の思うつぼだ。買うつもりがなかったものを高還元率をちらつかせて買わせるのが狙いなのだから、トクしたと喜んでばかりではいけない。

 同時に、自分が使いやすい決済アプリをなるべく絞り込むことが大切だ。多種多様なアプリをダウンロードしてキャンペーンごとに“浮気”して使用すると、還元されたポイントが別々に付与されることになる。その小銭のようなポイントを使い切るために、また買い物をし、そして細々としたポイントが付与されて、またそれを使うために――以下、繰り返しの無限ループになるからだ。では、使いやすい決済アプリをどう選ぶかについてだが、それについては次回に詳述したい。

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

消費経済ジャーナリスト。生活情報誌等の雑誌編集者として20年以上、マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析した経験から、貯蓄成功のポイントは貯め方よりお金の使い方にあるとの視点で、貯蓄・節約アドバイスを行う。また、節約愛好家「激★やす子」のペンネームでも活躍中。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)。
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