また、金利もそろそろ上がり始める気配を見せている。トランプ政権が財政出動をすれば市場から財源を求めねばならず、巨大な資金需要が発生する。それは金利の上昇要因となる。アメリカの金利が上がれば、日本の金利も上がらざるを得ない。金融自由化によって、主要国の金利差が大きくなると不健全な資本の流入や流出が起こるからだ。
金利と物価はある程度シンクロする、というのが経済学の基本的な前提だ。物価が上昇する程度には銀行預金の金利がつかなければ、人々は争ってお金を使おうとする。逆に、物価が下がるデフレ局面では、人々は低金利でも銀行にお金を預けておく。今の日本がそうだ。
しかし、どうやらトランプ政権では金利が上がりそうな気配が漂っている。現に今、アメリカの金利が上がっている。さらに日本の金利も上がり基調になってきた。緩やかでも、インフレがやってくるかもしれないのだ。
一時的な不動産不況の可能性も
さて、その時、不動産市場はどうなるのか?
結論からいえば、基本的な構造は変わらないはずだ。
その条件としてまず、インフレの程度が普通であること。年率5%くらいまでなら、その範囲に入る。次に、極端な円安にならないこと。1ドル=200円くらいまでは許容範囲。円安になると建築資材が高騰するので、建築施工費に跳ね返る。結果的に住宅の価格が上がってしまう。
不動産業界や住宅産業には、多少のコスト高を「企業努力で吸収しよう」という発想はほとんどない。価格転嫁はドラスティックに行われるはずだ。むしろ、ここを好機とばかりに自分たちの利益を上乗せする企業が続出するかもしれない。長年「売り手市場」だった住宅産業に染み付いた悪弊は、なかなか抜けきらないのが現実だ。
ただ、だからといってそういった価格が消費者側に受け入れられるかどうかは別問題。一時的な不動産不況がやってくるかもしれない。
しかし、インフレによる影響を軽微に留めるためのもっとも必要不可欠な前提は、同時に名目的な個人所得も増えることだ。「物価が上がったのに、給料が増えない」というのでは、相対的に貧しくなるだけだ。
ただ、個人所得が上昇するのはインフレ循環の一番最後の過程ではないかと推定される。インフレによって企業の名目売上額が上昇。それに伴って利益額も増えた後、やっと労働者の賃金に反映されると考えるべきだ。したがって、デフレからインフレに変わったのちしばらくは、給与所得者の生活は苦しくなるはずだ。