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また、手続き的には、不動産登記法に所有権放棄による所有権抹消登記の規定を設けることが必要になる。さらに放棄後の管理については、国よりは地域の実情をよく知る自治体が行うほうが望ましいという考え方も出てこよう。
なし崩し的に放棄された状態になり、管理責任も果たされなくなっていくのは、国土の管理という意味で望ましい状態ではない。一定の費用負担を求めた上で、放棄を認める仕組みを設けるのは、国土の管理を適正に行っていくという意味で正当化できると考えられる。しかし所有者にとっては、費用を負担できない場合には放棄したくてもできず、結局のところ、なし崩し的に放棄され、管理責任も果たされない不動産が増える事態は、こうしたルールを定めても出てくるのは避けられそうにない。
この問題は、人口減少時代に使われなくなった不動産の処理や管理について、最終的に国や自治体がどの程度関与していくのかということとなる。国土の荒廃を防ぐため、積極的に関与していくべきなのか、あるいは財政負担を考慮して最小限の関与にとどめておくべきなのか。そのバランスをとった仕組みづくりが、今後、必要になってくると考えられる。
(文=米山秀隆/富士通総研主席研究員)
【参考文献】
加藤雅信(2015)「急増する所有者不明の土地と、国土の有効利用」高翔龍他編『日本民法学の新たな時代─星野英一先生追悼』有斐閣
田處博之(2015)「土地所有権は放棄できるか─ドイツ法を参考に」『論究ジュリスト』第15号
吉田克己(2015)「都市縮小時代の土地所有権」『土地総合研究』第23巻第2号
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