東京23区では45年段階でも人口は増加する見込みですが、都下では減少が見込まれるところが多いのです。なかでも、図表4にあるように23区は45年でも、中央区は15年比で34.9%増加するなど、軒並み増加が見込まれています。それだけ将来性があるとみられているわけで、当然地価にもそれが反映され、公示地価の上昇率が高くなっています。
東京都でも福生市の人口は4割近く減少する
反対に、都下でも福生市などは人口の大幅な減少が見込まれており、地価の上昇率は低くなっています。なかでも、青梅市の公示地価は依然として0.8%のマイナスで、地域としての将来性の低さが地価に反映されているとみるべきでしょう。青梅市在住の方には申し訳ありませんが、それが現実のようです。
隣の神奈川県でも、横浜市、川崎市、相模原市の政令指定都市の各区の公示地価はすべてプラスだったものの、三浦市-5.1%、南足柄市-3.0%、横須賀市-2.6%などマイナスの都市が多くなっています。何しろ、住宅地としても観光地としても人気の高い鎌倉市でも-0.1%ですから、大都市圏でも中心部への集中度が高まり、人口が減少する周辺部はジワジワと厳しくなっていることがわかります。
大都市圏こそ駅近立地が評価される
18年の地価公示において、国土交通省では最寄り駅からの距離別の平均変動率を算出しています。図表5をご覧ください。三大都市圏では最寄り駅から0.5km圏内の住宅地は1.7%の上昇であるのに対して、0.5~1km未満では1.3%と距離が遠くなるほど上昇率は下がり、2~3km未満では-0.1%になり、5km以上では-1.1%という結果でした。
大都市圏ほど利便性の高い駅近、駅前の土地への評価が高く、大都市圏にあっても利便性の低い土地は上がらない、むしろ下がるということです。
年々上昇率の格差が拡大している
このあたりが、バブル期の地価上昇と異なる点で、一律に上がるのではなく、優勝劣敗がいっそう明らかになる、そんな地価上昇といっていいでしょう。
実際グラフでもわかるように、この距離圏別の変動率の違いは、年々大きくなっています。上がるところだけは上がるけれど、評価の低い土地は見向きもされず、上昇の波から取り残されて、むしろ下がってしまう――そんな厳しい時代を迎えています。
地方圏では首都圏ほど極端ではありませんが、やはり同じような現象が起こっています。最寄り駅から0.5km未満では0.7%の上昇ですが、1.5km以上ではマイナスになってしまいます。
それなりの年収や資産などがあって、大都市圏の都心に近く、駅前や駅近の土地や住宅を買えればいいのですが、それが可能な人は限られます。多くの平均的な会社員にとっては、いよいよ選択が難しくなってきそうです。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)