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榎本博明「人と社会の役に立つ心理学」

父親が単身赴任・専業主婦のほうが子どもの学力が高い、その理由への危険な誤解

文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士

 それに対して、母親の場合は、小学6年生でも中学3年生でも、そして国語でも算数・数学でも、「就業していない」家庭の子どもの学力がもっとも高く、「16時より前に帰宅する」家庭の子どももそれに準じて学力が高い。父親の場合とは逆に、「22時以降に帰宅する」家庭の子どもの学力が著しく低くなっている。

 このように、父親が単身赴任しているほうが子どもの学力は高く、父親の帰宅時間が遅いほうが子どもの学力が高い。そして、母親は単身赴任していないほうが子どもの学力が高く、母親が就業していないか帰宅時間が早いほうが子どもの学力が高い。

 こうした調査結果が、わりとラフなかたちで紹介されたため、世の教育熱心な親たちの間では、「子どもの学力向上のためには、母親は家庭にいるほうがよいが、父親は家庭にいないほうがよい」といった短絡的な認識が広まってしまったようだ。

 だが、それは明らかに勘違いだ。なぜか。それを次に解説しよう。

勉強に集中するには父親は邪魔になる?

 これまでに紹介した調査結果から、単身赴任や残業などで「父親が家庭に不在がちな場合ほど子どもの学力が高い」というのは事実である。そして、「母親が家庭に不在がちな場合ほど、子どもの学力は低い」というのも事実である。

 そこから、父親の存在は子どもの勉強の邪魔になる、どうも父親がいると子どもは勉強に集中できないようだ、というように受け止められた節がある。そうなると、父親はできるだけ家庭に不在がちにしたほうがよいということになる。

 だが問題は、父親の不在が学力の高さの原因になっているのかどうかという点である。あるいは、母親の不在が学力の低さの原因になっているのかどうかという点である。そこには別の要因が働いているのではないだろうか。

 この調査では、保護者の社会経済的背景についても調べ、保護者の学歴や収入を考慮したデータ集計も行われている。それをみると、父親に関しては、社会経済的地位が高い家庭ほど、つまり世帯年収と保護者の学歴が高いほど、帰宅時間が遅いといった傾向がみられる。

 一方、母親に関しては、社会経済的地位が高い家庭ほど、つまり世帯年収と保護者の学歴が高いほど、就業していない比率が高いといった傾向がみられる。

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授等を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした執筆、企業研修・教育講演等を行う。著書に『「やりたい仕事」病』『薄っぺらいのに自信満々な人』『かかわると面倒くさい人』『伸びる子どもは○○がすごい』『読書をする子は○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『モチベーションの新法則』『仕事で使える心理学』『心を強くするストレスマネジメント』(以上、日経文庫)、『他人を引きずりおろすのに必死な人』(SB新書)、『「上から目線」の構造<完全版>』(日経ビジネス人文庫)、『「おもてなし」という残酷社会』『思考停止という病理』(平凡社新書)など多数。
MP人間科学研究所 E-mail:mphuman@ae.auone-net.jp

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