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熊谷修「間違いだらけの健康づくり」

牛乳は“体に有害or良い”論争めぐり研究報告…高齢者、飲まないと死亡リスク上昇

文=熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事
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 牛乳を有害視する論拠には、含有成分の負の側面に着目しているものが多く見受けられる。また、大半が欧米人対象の疫学データを引用しているのも特徴である。しかし、欧米人ではない日本人の疫学的な分析を通して、“牛乳を飲む”と健康の最終的指標である総死亡リスクが高くなるのか低くなるのかでみるのが最良だろう。

長期の追跡調査

 前振りが長すぎたが、筆者は牛乳肯定派のシニアの健康と栄養問題の研究者だが、牛乳の健康への影響については長年関心をもち続けてきた。特に注目してきたのは、牛乳の飲用習慣の有無ごとで総死亡リスクに違いが出るかではなく、牛乳飲用の習慣が変化してしまうことが総死亡リスクにどのように影響するかだ。牛乳飲用習慣はわが国の平均寿命の延びに大きく貢献した歴史がある。日本人にとっては有用な健康習慣とみて間違いない。

 とはいうものの、このご時世、前述のごとく健康情報は湯水のごとくあり、その入手はいとも簡単だ。いついかなる情報にのみ込まれ健康習慣を変貌させてしまうかもしれない。健康習慣の変化が、その後の健康状態にどのような変化をもたらすのか見極めようとした研究は日本ではとても少ない。

 筆者らのデータは、約1250名の元気シニアを追跡して分析されたものだ。牛乳を飲む習慣を「ほぼ毎日飲む」「2日1回」「週に1、2回」「ほとんど飲まない」の選択肢を設けアンケート調査して、7年間の総死亡リスクを比較している(大仙市委託調査研究)。

 この1次分析の詳細は省くが、牛乳は2日に1回以上飲むか、飲まないかで、生死のリスクに大きな違いが出てくることがわかっている。2日に1回以上飲むグループ(「ほぼ毎日」あるいは「2日1回」)とそれ未満のグループ(「週に1、2回」あるいは「ほとんど飲まない」)に分け総死亡リスクを比較すると、未満のグループのリスクが35%も高い(誤差の可能性は1%未満)。

 男女差、年齢が何歳か、シニアの総死亡リスクに多大な影響を及ぼす趣味習慣の影響(趣味のあるシニアほど明らかに健康長寿)を加味調整している。合理的な疫学分析の証拠をみれば、長生きしたい方は牛乳は飲むべきなのである。

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

1956年宮崎県生まれ。人間総合科学大学教授。学術博士。1979年東京農業大学卒業。地域住民の生活習慣病予防対策の研究・実践活動を経て、高齢社会の健康施策の開発のため東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)へ。わが国最初の「老化を遅らせる食生活指針」を発表し、シニアの栄養改善の科学的意義を解明。介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者である。東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、介護予防市町村モデル事業支援委員会委員を歴任

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