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ストリップ女子、急増…胸を突き上げられる“得体の知れない感動”の虜に

文=菅野久美子/ノンフィクション作家
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浅草ロック座(「Wikipedia」より/Kakidai)

 私がストリップ女子になって3年以上が経つ。ストリップの魅力に取りつかれてからは、浅草ロック座を中心に、新しい公演があると必ず顔を出すようになった。

 ストリップ劇場は、年々減少の一途をたどっている。2017年には「新宿TSミュージック」が閉館、新宿歌舞伎町に長年構えていた「DX歌舞伎町」、通称デラカブは今年の6月30日に惜しまれつつ閉館した。ストリップ劇場はその特殊な事情から新規オープンは困難だといわれている。動画サイトなどの台頭により、至近距離で踊り子の迫力を目の当たりにできるストリップは希少な文化となってきている。現にストリップ劇場のお客さんも高齢化が進んでいるような気がする。

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『超孤独死社会特殊清掃の現場をたどる』(菅野久美子/毎日新聞出版)

 私は、まだ入りたての新人がひたむきにがんばっている姿を見るのも好きだ。私の主観だが、新人さんは全裸景が与えられることが多い。全裸景とは、その名の通りスッポンポンになるということである。新人の踊り子さんは、必死にポーズを取ろうとしても、バランスが取れずにフラフラしていたり、おぼつかなかったりする。熟練の技術が要求されるストリップの世界、新人の踊り子さんがベテランの域に到達するのは、かなりの時間と技術が必要になる。私は、新人さんはスッポンポンになってニコニコしているだけでオッケーだよね、というストリップの大らかさが大好きである。私たちが見にいくのは、プロの舞台ではない。あくまで客体は裸になった女性なのである。

 新人さんが慣れないなりに、全裸で必死に観客に笑顔を振りまく姿は愛らしい。そして、そんな姿が健気だ、と思う。この舞台に裸になって立っているだけで、尊敬に値する。だから完璧な踊りなんか求めない。それは取り巻く観客の男性たちも合意の上だ。観客の男性たちを見ていると、この舞台に立ってくれてありがとうという気持ちで、新人さんをニコニコしながら応援しているようだ。そして、そんな「オジサン」たちの穏やかで優しい目を見ていると、私もなぜだか、心の底から幸せになる。

 ある新人の踊り子さんは、初めて浅草ロック座に立った。20日間のぶっ続けの興行を終えようとしていた楽日のこと、この日2回目のベッド(突き出した前盆で衣服の着脱を行うこと)で、彼女の目に涙が光っていたのを私は見逃さなかった。裸になり汗を全身に滴らせながら、彼女は涙を流していた。のちのあいさつで彼女自身が語っていたが、彼女は泣いていたのだ。

女の生きざまそのもの

 ポラ館と呼ばれるストリップ劇場と違って、浅草は休憩を挟みながらも、演者が一丸となって13時~23時までぶっ通しで公演を行う。公演期間だけでなく、練習期間も合わせたら30日にも及ぶ。浅草の特徴として、一貫したテーマと出演者みなで踊る群舞があるからだ。

 浅草はオープニングやフィナーレでは群舞を行い、プロのダンサーとも共演する。自分の景だけ振り付けを覚えればよいというわけではない。まったく踊りの素養のない新人ならば、振りを覚えるのも一苦労なはずだ。自分の振りが狂えば、「お姉さん」と呼ばれる先輩たちにまで迷惑をかけることにもなる。

 慣れない練習の中で、きっと彼女にも辛い時間もあったはずだ。浅草ロック座を取り上げたあるテレビ番組では、先輩に叱責されながらも懸命に踊りを覚えようとする踊り子さんの姿を見た。しかし、それをやり遂げたときに、きっとまた成長する。さまざまな困難を乗り越えて、今ここに立つ彼女の「涙」は美しく、思わずもらい泣きしている自分がいた。

 たまたま劇場に出勤前の私服姿の踊り子さんと何度か遭遇したことがある。道を歩く踊り子さんは、私たちと何も変わらない、街でいつもすれ違っているような至って普通の女の子だった。踊り子さんは、ファンからの頂き物をよくSNSにアップしている。最近流行のタピオカミルクを頬っぺたにくっつけて一緒に笑顔を振りまく姿は、無邪気そのものだ。

 しかし、そんな普通の女の子が、あんなにも力強くステージでは堂々と、裸一貫で勝負している。踊り子さんによって、足に痣があったり、幾重にもテーピングをして舞台に臨んでいる人もいた。幾重にもテーピングをして舞台に臨んでいる踊り子さんもいた。彼女たちはそれでもステージに立ち続ける。

 女にはさまざまな人生の困難がある。私はそれを彼女たちに投影して、力強い姿で袖へと帰っていく姿を見送る。それは、いくつもの困難が立ちはだかる女の生きざまそのものだ。女が、女であるというだけで肯定されるような世界が一つぐらいあっていい。今日も、「あの子ががんばっているから、私も明日もがんばろう」と、女性たちの背中をポンと押してくれるのだ。私たちを勇気づけてくれるストリップ文化がこれからも、残り続けますように……と願わずにはいられない。

(文=菅野久美子/ノンフィクション作家)

菅野久美子

菅野久美子

1982年、宮崎県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。ノンフィクション作家。著書に『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)『アダルト業界のすごいひと』(彩図社刊)『エッチな現場を覗いてきました!』(彩図社)がある。

Twitter:@ujimushipro

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