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垣田達哉「もうダマされない」

コロナ、国の対策が限界、感染拡大抑制が困難に…企業・娯楽施設の自主休業論も

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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菅首相と新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長(首相官邸のHPより)

 11日、厚生労働省の専門家会議は、現在の医療体制は災害に近い局面を迎えていると危機感を訴えた。そして「自分や家族を守る行動を取るように」と国民に求めたが、まるで「政府の対策ではどうしようもないので自己防衛するしかない」とさじを投げたような言い方にも聞こえる。

 一方、12日に政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は、尾身茂会長が記者会見で「今月26日までの2週間、集中的に対策をさらに強化し、東京都では緊急事態宣言前の7月前半に比べて、昼夜を問わず人出を5割削減する必要がある」とし、緊急事態宣言が出されている地域に関し、次のような具体的な提言をした。

・感染リスクが高いとされる百貨店の地下の食料品売り場や、ショッピングモールなどの人出を強力に抑えること

・基礎疾患のある人や妊婦を中心にテレワークをさらに強化すること

・外出をなるべくせず、県を越える移動は控える

 一方で、観客が声を出さないコンサートや演劇、映画館、公園、図書館や美術館などの施設は、感染リスクを比較的低くできるので、感染防止策を徹底したうえで利用可能とした。尾身会長は、「自然災害と考えないと、この難局は乗り越えられない。このままでは救える命が救えなくなる」と強調したが、新しく出てきたワードは「百貨店の地下食品売り場」と「ショッピングモール」だけである。

 昨年5月の緊急事態宣言時の人流まで抑制しなければならないと言い、災害が襲ってきているという危機感を訴えている割には、非常に甘い提言といわざるを得ない。コンサートや演劇、映画館、図書館、美術館、ジム、カラオケ店、さらにパチンコ店を諸悪の根源かのごとく追い詰めた昨年の最初の緊急事態宣言と比べると、今回の提言では、同じくらい人流を削減できるとは到底思えない。

 逆の見方をすると、1年の経験から、「お願い(自粛)ベースでしか人流を抑制するすべがない」から、こういう言い回しになるのだろう。

出かける場所をなくす

 政府が大型店舗だけに休業を要請しても、人出を半減させることはできないだろう。人出を抑制するためには、出かける場所をなくすことだ。基礎疾患のある人や妊婦を中心にテレワークをさらに強化するだけでは、とても出勤する社員を減らすことはできない。

 出かける先として一番多いのは、会社だ。だから、出かける場所をなくせばよい。会社を休みにすれば、社員は出かける必要はない。しかし、国は何もできない。しようとしない。

 そこで企業自ら率先して休業宣言をしてほしい。もちろん、社員もパートも有給である。いの一番に、日本のトップ企業であり、コロナ禍にあっても昨年度は好決算を出したトヨタ自動車に、8月末日までの休業を宣言してほしい。トヨタ自動車は、製造部門も販売部門も、8月はかなり休業日が多いが、15日以降末日まですべて休業してはどうか。

 8月の売上が半減してもビクともしないだろう。さらに、トヨタに追従して経団連1461社、業種別109団体、地方経済団体47団体にも追従してもらう。そうすれば、日本商工会議所や経済同友会の各企業のなかにも追従するところが出てくるだろう。日本の窮地を救うために、日本の経済団体が自ら人流抑制に取り組むのだ。大手企業が休業すれば、人流は減る。

 それだけでは人流削減はできない。同様に、休日に行くところも休業しなければ効果はない。観光地や娯楽施設が営業していては、かえって人出が増える。海、山などの観光地も、地方自治体や観光協会が中心となって、できるだけ多くの観光スポットを閉鎖する。そうすれば、夏休み中である子どもたちを連れて行くところがなくなる。原宿の竹下通りも、鎌倉の小町通りも一斉に休業宣言をする。

 医療災害を防ぐために、東京ディズニーリゾートもユニバーサル・スタジオ・ジャパンも、自ら進んで休業する。そうなれば、中小のテーマパークもショッピングモールも、食品売り場以外は休業するだろう。それでも開けている店は出てくるだろうが、多くの店が一斉に休業するのであれば、従う店のほうが多いだろう。

 政府は、休業を要請すれば補償をしなければならない。なぜか今の政府は、コロナに対する金を出し惜しみしている。それならば、半月休業しても倒産しないだけの体力のある企業は、自ら率先して休業宣言をしてほしい。災害に匹敵する事態を打開する救世主として感謝されるのではないだろうか。

活発なテレビ番組制作

 もう一つ自粛すべきは、テレビである。感染対策はしているとはいえ、緊急事態宣言が出されているのに、通常の番組制作をしている。昨年の最初の緊急事態宣言のときには、NHKの大河ドラマも朝ドラも、民放のゴールデンタイムの番組も、一斉に制作を中断した。

 しかし、その後の緊急事態宣言では、リモート出演を多用しているが、リモートといっても自宅から出演している人は少なく、テレビ局の別の場所からリモート出演している人が多い。つまり、出演者は外出しているのだ。新幹線などを利用して東京や大阪を行き来している人もいる。

 ドラマだけでなく、ロケや旅番組、囲碁、将棋、麻雀などの娯楽番組も一斉に中止したのに、昨年よりもはるかに深刻な状況にもかかわらず、ドラマやバラエティーなどの番組制作は休むことなく、ワイドショーでは多くの出演者をわざわざ家から外出させて出演させている。しかも、外出している出演者が「出かけるな」と視聴者に訴えている。テレビこそ、緊急事態宣言が出ているときには、率先して外出を控えるべきだろう。今の状態では、まったく説得力がない。

 まずはテレビから、まずは大手企業から率先垂範するべきだ。この半月(8月15日から30日)は、夏休み期間中なので、学校の心配をする必要はない。大手企業なら、半月休業してもなんとか持ちこたえることはできるだろう。とにかく、人流を抑制し、医療体制を整備する時間稼ぎをするしかない。このままでは、企業も観光地も市民も共倒れになる可能性が高い。

 国が何もしないのであれば、半月だけ、我々が今まで以上の我慢をして、日本を立て直すしかない。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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