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エホバの証人、暴行罪成立や児童虐待防止法違反の恐れ…子どもも勧誘活動、輸血拒否

文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表
エホバの証人、暴行罪成立や児童虐待防止法違反の恐れ…子どもも勧誘活動、輸血拒否の画像1
エホバの証人の日本支部(「Wikipedia」より)

 教義に基づき信者とその子どもに対して輸血を拒否するよう指示していることで知られるキリスト教系団体「エホバの証人」。同教団の問題追及と信者・元信者らの救済を目的とする「エホバの証人問題対策弁護団」が結成され、子どもに輸血などの医療行為を受けさせないことはネグレクトにあたるとする厚生労働省の児童虐待防止に関するガイドラインに違反するとして、同省に通報することがわかった。エホバの証人といえば、親が子どもへの「懲らしめ」として鞭打ちを行うことや、幼い子どもを同伴させて住戸を個別訪問する勧誘活動などが有名だが、児童虐待に該当する恐れもあり、「宗教二世」の問題が社会問題化するなか、教団の実態が再びクローズアップされている――。

 エホバの証人は、1953年に日本支部として宗教法人「ものみの塔聖書冊子協会」が設立され、現在国内では20万人以上の信者がいるとされる。聖書の教えを厳格に守ることが特徴で、イエス・キリストの創造主とされる全知全能の神「エホバ」以外を崇拝することは禁じられている。未来に訪れるとされる「ハルマゲドン(世界の終末)」のあとにイエス・キリストが支配する楽園が出現し、そこに行くためには現世でエホバの教えに従う必要があるというのが教義の根本。輸血を受けることが禁止されているため、信者である親が子どもが手術を受けることを拒否して命を落とす事例があったり、親が子どもへの「懲らしめ」として鞭打ちを行うことなどが広く知られている。

 信者である親が、勧誘活動のため幼い子どもを連れて住戸を一軒一軒戸別訪問する光景を目にする機会もあるが、信者の子どもは年齢が上がっていくにつれて布教活動に費やす時間のノルマが増やされるため、学校で部活動に入れなかったり、大学への進学が許されないケースもある。また、脱会すると信者である親や友人たちとの連絡が絶たれ「排斥」されるという点も特徴だ。

 最近では、昨年11月に東京都立大学・南大沢キャンパスで同大学教授で社会学者の宮台真司さんが男に刃物で切りつけられ重傷を負った事件で、容疑者とみられる男性の母親がエホバの証人の信者であることも判明し、教団の実態が注目を集めている。

「無輸血治療」を希望すると記した身元証明書

 そうしたなか、昨年12月には厚労省は、親が子どもに輸血などの医療行為を受けさせないことはネグレクトにあたるとするガイドラインを明示したが、26日付「テレ朝NEWS」によれば、教団は信者に対し文書で子どもへの輸血を拒否するよう示しているという。また、今月27日付読売新聞記事によれば、信者は信仰上の理由で「無輸血治療」を希望すると記した身元証明書を子どもに持たせているという。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。

「かつては、旧民法822条に、監護や教育のために懲戒できると規定されていましたが、改正された民法では明確に体罰は厳禁と規定されています。したがって、我が子であっても、体罰は結果によっては暴行罪や傷害罪が成立することとなります。

 また、輸血をさせないという行為も、要は必要な治療を受けさせないということですから、児童虐待防止法が禁止する『児童の心身の正常な発達を妨げるような長時間の放置』に該当する可能性があり、実際、厚生労働省もそのような指針を出しているとのことです。

 なお、勧誘活動のための住戸訪問に同伴させること自体は、性質は違えど『親の趣味のバンド活動のビラ配りに付き合わせる』こととあまり変わらないような感じもするので、何とも言えません。しかし、『勧誘活動についてこなければ地獄に堕ちる』などと脅かすなど、世の中の常識を理解する能力に乏しい年齢の子供を必要以上に怖がらせる意図があれば、心理的に虐待させることにつながりますので、これも児童虐待防止法に違反する可能性があります」

 当サイトは2月7日付記事『エホバの証人、宗教2世が続々と被害告発…鞭打ち、子どもも勧誘活動で大学進学断念』で同教団の実態を報じていたが、今回、改めて再掲載する。

――以下、再掲載――

「一般的なキリスト教とは聖書の解釈が異なる部分があり、聖書に書かれている字面そのものに忠実なため、輸血の禁止や鞭打ちなどが行われる」(宗教専門誌「宗教問題」編集長の小川寛大氏/2月6日付当サイト記事より)

 信者である親が、勧誘活動のため幼い子どもを連れて住戸を一軒一軒戸別訪問する光景を目にする機会もある。

「年齢が上がっていくにつれて布教活動に費やす時間のノルマが増やされるので、学校で部活動に入れなかったり、大学への進学が許されないケースもある。教義に背けば脱会となるが、信者である親や友人たちとの連絡が絶たれ『排斥』される点は創価学会との共通点」(エホバの証人を取材する週刊誌記者)

 エホバの証人の信者を親に持つ40代女性はいう。

「偶像崇拝や国家の崇拝などが禁じられている関係なのか校歌の歌唱が禁じられていたため、学校の音楽の授業で一人ずつ校歌を歌うテストの際、クラスメート全員の前で『私は信教の関係で校歌が歌えないので違う曲を歌います』と言い、なんともいえない空気が流れたのは本当に嫌な思い出です」

人権問題

 京都府立大学准教授で宗教2世のための自助グループの活動に取り組み、多くのエホバの証人の元信者から話を聞いてきた横道誠氏はいう。

「まず前提として、容疑者の男がいかなる宗教的背景を持っていたとしても、一般人を襲撃して危害を加えるという行為は決して許されるべきではありません。また、こうした事件が続くことで、『宗教2世』は危険だという誤った認識が広まってしまうことも、懸念すべき事態だと考えます。以上の2点はもっとも言いたいことです。男が宗教教育を受けたのかどうか、受けたとすれば何歳から何歳までという情報すら出ていませんが、仮に幼少期からの2世だとすれば、男はエホバの証人の『ムチ世代』に当たります。1960~90年代、教団はパンフレットなどでも子どもへの厳しい体罰を推奨しており、家庭によって頻度や程度にむらはありますが、親がガスホースやベルトで子どものお尻を叩くことが行われていました」

 元信者たちは、どのような苦悩を抱えていたのだろうか。

「子どもの頃から、お誕生日会やクリスマス会などのお祭りごとへの参加が禁止され、家でもテレビのアニメやバラエティー番組を見ることが許されなかったりして、学校のクラスで孤立しがちになります。親に連れられて布教活動のため戸別訪問するなかで、クラスメートの家に行くこともあり、それがきっかけでクラスでいじめを受けたり敬遠されたりして心に傷を負った人もいます。アメリカでは児童に対する性的虐待をめぐり裁判も起こされており、これまで清潔だとされた教団のイメージは海外では崩れつつあります」(横道氏)

 旧統一教会では信者に多額の献金をさせるシステムが問題視されているが、その点ではエホバの証人は大きく異なるという。

「信者に多額の献金をさせることには否定的なので、お金に関するトラブルは目立っていません。その一方、『時間を献金』させることには積極的で、布教活動により多くの時間を費やすことを重視し、その時間も決められる。布教活動に時間を割くために大学に進学することに否定的で、成人後も正社員にならずにアルバイトやパートで働くことが推奨されています。これには、ハルマゲドンは訪れて世界が終わるという教義ゆえにキャリア志向に否定的な面も影響していると思います」(同)

 エホバの証人には見逃せない人権問題も存在すると横道氏は指摘する。

「婚前交渉をはじめ多くの禁止事項があり、それに背いた信者は査問委員会のようなものにかけられ、地区のリーダーにあたる『長老』から具体的にどのような行為だったのかを根掘り葉掘り質問されます。破門に当たる『排斥』を受ければ、信者である親や知人たちと会話することも許されず、それまで一般社会から隔てられて信者コミュニティーのなかだけで生きてきた人は、非常に苦しい状況に追い込まれることになります」 

<多くの信者が一体となって子どもたちを虐待し、権利を侵害>

 こうしたエホバの証人の信者を親に持つ人々の実態に関する報道は徐々に増えつつある。たとえば1月30日付「東洋経済オンライン」記事『教団から「排斥」されると両親からも絶縁される「エホバの証人」の残酷すぎる現実』では、子どもの頃から親に鞭打ちをされ、布教活動のために学校の部活動にも入れず、友達と遊ぶこともできなかったという男性の事例を紹介。疑問を抱き始め集会に欠席するようになり、父親から暴力を振るわれたその男性は両親に暴力を振るうようになり、父親によって精神科病院に入院させられ精神疾患を患い「排斥」されたという。また、この男性の妹は布教活動を優先するために、両親によって大学進学も出産も諦めさせられたという。

<人生を狂わされた。もう取り戻すことはできません>(「東洋経済」記事より)

 政治も動きつつある。立憲民主党など野党は昨年11月、元エホバの証人2世、3世への国対ヒアリングを実施。鞭打ちでは肌を直接、革ベルトで叩かれ、親の信者同士では何を使えば効率的に子どもにダメージを与えられるかという話し合いが日常的に行われていたという証言も出ていた(以下、立憲民主党のHPより引用)。

<小学校高学年の頃には鞭に性的な羞恥心も覚えるようになり、毎日いつ自殺しようか本気で悩み、毎日ベランダから下を見て死ねるかどうかを考えていたが、実際には飛び降りる勇気はなかったと語る一方で、今でもあの時飛び降りていればよかったと思っているとも話しました>

<旧統一教会とは違い、エホバの証人に関連する事件が最近起きていないので報道できないというのは「勘違いだ」と語り、「事件は起き続けている」「宗教活動と信教の自由を隠れみのに親、家族、多くの信者が一体となって子どもたちを虐待し、権利を侵害し、自由を踏みにじってきた」と指摘しました>

<自ら受ける体勢を取るよう指示をされ、指示に従わなかったり逃げ出したりすると鞭の回数が増やされるなどもっと酷い目に遭う>

 前出「FLASH」記事の取材に対しエホバの証人は、宮台さん襲撃の容疑者である男本人は信者ではないと回答しているが、男は高校卒業後、定職に就かず引きこもり状態だったということであり、信者である母親との関係もまた、犯行動機を解明する上で一つの重要な要素になるかもしれない。

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。
山岸純法律事務所

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