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南清貴「すぐにできる、正しい食、間違った食」

日常生活すら困難になる「化学物質過敏症」が、1年間●●したら解消された

文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事

化学物質過敏症を軽減できた事例

 一説によると、私たちはなんと5万種類以上の化学物質に、日常的にさらされているといわれています。さらに、化学物質は毎年300種類も新たなものがつくり出され、市場に投入されているのです。そして、その毒性についての正しい情報が開示されているとは言い切れません。

 近年、患者が増えている化学物質過敏症は、ありとあらゆる化学物質に過敏に反応してしまい、日常生活すらまともに送れなくなってしまう症状です。シックハウス症候群も、そのひとつですが、最近では電磁波に対する過敏な反応をする人も増えてきて、これも化学物質過敏症のひとつと考えられています。免疫系、神経系、内分泌系など、さまざまな要素が関与していて、出てくる症状も千差万別です。また、その症状の程度も多様で、非常に重篤な人もいれば、軽微な人もいます。日本では、この化学物質過敏症の人が、推定70万人から100万人もいるといわれています。

 筆者が主宰している一般社団法人日本オーガニックレストラン協会(略称:JORA)にも、化学物質過敏症の方(Aさん)が学びに来られました。Aさんは、数年間イギリスに住んでいましたが、その時はまったく症状は出ていませんでした。日本に帰ってきてから数カ月して、体のだるさや皮膚の異常、頭痛、息苦しさなど、さまざまなアレルギーのような症状に悩まされ始め、筆者が初めてお会いした時は、顔色も悪く、覇気がなく、動きも鈍く、会話などへの反応も今より1テンポ遅い感じでした。

 JORAの講座を受けるようになり、座学の時はまだ何も明かしていませんでしたが、料理をつくる実習の時に、ご自分が化学物質過敏症であることを打ち明け、素材でオーガニックでないものを使用する時は教えてほしいと言われました。オーガニックでない料理は、つくるけれど食べないようにする、ということでした。JORAでは、ほとんどの食材はオーガニックで揃えていますが、季節によってはどうしても揃えられない野菜もあったりします。

 Aさんが通ってきてくださっている間は、こちらも事務局を通じて、すべての食材のトレーサビリティを明確にし、残念ながらオーガニックでない食材をやむを得ず使う場合は、お知らせしました。

 Aさんは料理を覚えていく過程で、自宅で使う食材もすべてオーガニックに切り替えて1年ほど経過し、上級講座も終わりかけた頃、さまざまな症状がほとんど出なくなっていました。少々の化学物質が混入していても、以前のように激しい反応はしなくなり、大変喜んでいらっしゃいました。

 先日、Aさんと一緒に食事会を開催したのですが、今は化学物質のことを気にせずに生活できるようになったとのことです。もちろん、かなり意識的に、食べるものや肌につけるものは選んでいるとのことでしたが、友人と一緒に外食しても体調が悪くなったりはしなくなったということです。

 あえて申し上げておきますが、筆者は医療関係者ではないので、「化学物質過敏症が治る」などとは口が裂けても言えません。しかし、もし読者の方々の中で、あるいは家族や親しい友人に化学物質過敏症に悩んでいる方がいたら、徹底的に食生活を変えてみることを提案したいと思います。

 それで化学物質過敏症が治るかどうかはわかりませんが、たとえ治らなかったとしても、食材を良いものに変え、調理法に気をつけ、ファストフードやコンビニ食などを避け、市販のジュース、コーラをはじめとする清涼飲料水には手を付けず、できるだけ自宅で料理をつくって食事をするということを続けて、何ひとつネガティブなことは起こらないということは約束します。

 化学物質過敏症は、いつ誰が発症してもおかしくありません。どのタイミングで発症するか、ぜんぜん見当もつかないのです。化学物質過敏症になってからでは遅いということに気づき、ならないようにするために普段の食事に気を遣ってほしいと、筆者は切実に願います。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)

南清貴

南清貴

フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会
代表理事。舞台演出の勉強の一環として整体を学んだことをきっかけに、体と食の関係の重要さに気づき、栄養学を徹底的に学ぶ。1995年、渋谷区代々木上原にオーガニックレストランの草分け「キヨズキッチン」を開業。2005年より「ナチュラルエイジング」というキーワードを打ち立て、全国のレストラン、カフェ、デリカテッセンなどの業態開発、企業内社員食堂や、クリニック、ホテル、スパなどのフードメニュー開発、講演活動などに力を注ぐ。最新の栄養学を料理の中心に据え、自然食やマクロビオティックとは一線を画した新しいタイプの創作料理を考案・提供し、業界やマスコミからも注目を浴びる。親しみある人柄に、著名人やモデル、医師、経営者などのファンも多い。

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