しかし、昨年6月に1号店を開店して以来、三光マーケティングフーズは驚くべきスピードで「東京チカラめし」の出店を続けており、スタートから1年も経っていないにもかかわらず、すでに73店舗も展開しているのです(5月1日時点)。居酒屋チェーンの経営で培ってきた食材の購買力を生かして、先行する3大チェーンとほぼ同価格の280円にて牛丼を提供しており、真っ向勝負を挑んでいることがわかります。
こうした戦略の背景には、これまで展開してきた業態の経年疲労や、東日本大震災直後の「飲み」の自粛などがあったのだと思われます。しかし、そこには
「夜のアルコールを頼みにした飲食店は、将来的に厳しいかもしれない」
という、かなり本質的な未来予測がベースにあるはずです。むしろ、そうした大きな課題に対して、震災を通して本気で向き合った結果、従来の出店戦略を大きく見直したというのが正しい言い方かもしれません。
そしてこの見直しは、同社のウェブサイトの「沿革」を見るとはっきりわかります。昨年4月までは、新規出店は先に触れた「金の蔵Jr.」がほとんどだったものが、6月を境にほぼすべて「東京チカラめし」に切り替わっているのです。まるで、まったく別の会社になってしまったかのような変わり身の早さです。
ワタミ、ゼットンetc.続々と「お酒」から遠ざかる外食企業
ここで挙げた三光マーケティングフーズは極端な例ですが、「アルコール業態中心の外食企業」が少しずつその姿を変えてきている事例は、ほかにも見て取れます。
例えば夜向きのダイニング業態を多数展開する名古屋発の企業・ゼットンは、この数年ハワイアンカフェ「アロハテーブル」を積極的に出店しています。この店では夜はお酒を飲んでいる人も多いですが、「ハワイ」を掲げていることもあって、明るく健康的な雰囲気ですし、日中には子供やペットを連れて、お茶を飲んだり食事をしたりしている人の姿をよく見かけます。
同社はさらに一歩進んで、自然食をベースとする食事・マクロビオティックを打ち出したデリ業態「アイランドベジー」を東京・広尾に出店しています。