米国に対する不満も高まる韓国世論
他方、19日には、在韓米軍の駐留経費の韓国負担増を求めた米国の要求を拒否し、米韓同盟に亀裂が生じて始めていることを露呈した。両国は一日かけて協議する予定だったが、わずか1時間余りで決裂したことが明らかになった。この交渉で米国が韓国に前年の5倍以上となる経費負担を求めたことが伝えられると、韓国内は米国に対する不満が高まり、「米軍は韓国から出ていけ」というシュプレヒコールをあげるデモまで発生した。
このように世論が日米に反目するなかで大義なくGSOMIAを延長すれば、「日米に屈した」との印象が広まり、文大統領の支持率が低下することは免れない。だが、GSOMIAがこのまま失効すれば、米国はさまざまな角度から韓国に圧力を加えるのは間違いない。文政権は板挟みの局面に立たされているといえる。
ただ、韓国世論がGSOMIA破棄を支持しているのは、文政権が発する「GSOMIAが失効しても韓国にはほとんど影響がない。困るのは日本」との説明を鵜のみにしているからではないかとの疑念が拭えない。だが、実際にGSOMIAが失効すれば、韓国は安全保障上、極めて大きなリスクを負うのは間違いない。それは、米軍関係者のみならず韓国軍関係者も深刻に指摘している。反対に、北朝鮮や中国からはGSOMIA破棄を歓迎する声が漏れている。
文政権の幹部は「GSOMIAを破棄しても米韓同盟には大きな影響はない」との見解を示しているが、日本との関係を断ち、米国の忠告を無視して北朝鮮や中国が喜ぶ政策を選択することは、決して軽微な影響では済まないだろう。
GSOMIA失効のリスクに気づいた一部の若者たちからは、破棄を撤回するように働きかける動きも出ているが、大きなうねりにはなっていない。同様に軍部も破棄撤回を青瓦台(大統領府)に進言しているとの報道もあるが、政府は従来の主張を貫いている。
GSOMIAは22日24時(23日0時)に終了期限を迎える。失効するときは、日米韓がこれまで築いてきた関係が破綻することを意味するのかもしれない。
(文=姜英順/ジャーナリスト)