結果からみれば、大蔵省・財務省(以下、財務省で統一)が主導してきたこの30年間の経済政策が失敗だった。“ザイムショノミクス”の蹉跌だ。
これだけ悪い実績が積み上がると、これから財務省の主導する政策に乗るのは、政治家も国民も蛮勇がいる。むしろ迷ったときは、財務省の意向と反対の道を進むほうが安全にみえる。一時成果をあげたアベノミクスも、つまるところ反ザイムショノミクスだった。8月2日に閣議決定された経済政策も、どれだけザイムショノミクスに反しているかで採点するのが、もっとも簡単で正確な分析になるだろう。
バブルの発生をさかのぼれば、1980年代に進めた金融自由化、85年のプラザ合意による急激な円高とその円高不況をカバーするための金融緩和、さらにその資産バブルへの対応が遅れてバブルが起こってしまった。
そして、バブル潰しのための過度の金融引き締めと消費税導入(89年)により、今度は不況の傷が深くなりすぎた。その際、金融自由化を目指しながらも、「一行もつぶさない」とした金融の護送船団方式をとったことにより、モラルハザードを起こし金融システムの傷を深め、バブル崩壊後の立ち直りを長期化させてしまった。さらに、97年にバブル後の不況から脱出する前に消費税を5%に増税して、経済をさらなる不況に導いた。
バーナンキ前FRB(米連邦準備制度理事会)議長をはじめとするアメリカの有力な経済学者は、これらの日本の経済政策を「完全な失敗」として認識して反面教師とし、リーマンショック(2008年)後の対応で正反対の政策がとられた。
つまり、資産市場のバブルには早めに対応すること、一旦バブルがはじけると大幅な金融緩和を行い、大胆な景気刺激策を続けること。そして、「大きすぎてつぶせないだろう」とばかりに過度に巨大なリスクを負うモラルハザード的な金融機関は、つぶすのもやむを得ないことであった。
最近では、14年に消費税を8%に増税したのも失敗だったであろう。11年に国民的合意がとれた震災復興予算を関係のない案件にまでバラ撒くことで、政治家や他省庁からの求心力を確保し、消費税の増税に持ち込んだようにすらみえる。
それぞれの政策は、その時においては正しいか、あるいは「やむを得ない」と思われるものであった。しかし、今から振り返ると、最悪のタイミングとやり方で、「正しい政策」とは正反対のことを実施してしまったとしかいいようがない。