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ジャーナリズム
「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第73回

大新聞の社長追放作戦は失敗?写真週刊誌に不倫暴露の効果は未知数、次の手も用意

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「それは甘いですよ。訴訟を起こすにはそれなりの準備が必要です。提起するのはこれからです。大体、『深層キャッチ』を訴えれば、大都、日亜両社が勝ちます」
「なんじゃ、お主、そんなことはありえんぞ。写真がありよるんじゃからな。仮に奴らが訴訟を起こしよっても、『深層キャッチ』が負けよるはずないわな」
「会長、何をばかなこと言っているんです。会長が国民社長時代に起こした名誉棄損裁判の判決を忘れたんですか」
「“押し紙裁判”のことを言うちょるんか?」
 「そうですよ。国民新聞が勝訴したのは写真じゃ“押し紙”を立証したことにならなかったからです。今度もその判例が適用されることになるんです」

 吉須はそう答えると、裁判の経緯と判決の概要を説明した。

 “押し紙裁判”は5年前、国民新聞が『週刊真相』のライバル誌『週刊春秋』を相手に起こした名誉棄損訴訟だ。

 当時、部数でトップの大都の猛追を始めた国民の公称部数の2割が売れていないのに販売店に押し付けている“押し紙”だとする告発記事を掲載、それに猛反発した国民が「事実無根の報道」として、一億円の損害賠償訴訟を起こしたのだ。

 1年前に最高裁で国民の勝訴が確定した。『週刊春秋』が2割の“押し紙”の存在を立証できなかったためだ。

 誌面には販売店にうず高く積み上げられた新聞の山や、古紙回収業者のトラックに大量の売れ残りの新聞を運び込む様子を写した写真が載っていた。しかし、判決は「証拠にならない」と一蹴したのだ。

 太郎丸は吉須の説明を聞いていたが、腑に落ちない様子で、切り出した。

「お主、違(ちご)うとるんじゃないかのう。“押し紙裁判”でうちが勝ちよったのはじゃな、『週刊春秋』が『2割が“押し紙”だ』と立証できんかったからじゃ。写真は関係ないじゃろ」
「会長、それは違います。写真は“押し紙”の存在を信じるに足る証拠なはずですが、裁判官はそれを認めないのです。裁判では、今度の写真も不倫の証拠にはなりません」

 太郎丸は「うっ」と発しただけで、二の句が継げなかった。それをみて、深井が助け舟を出した。

「もういいでしょう。まだ、裁判になるかどうか、わかりませんから。それより、会長、2、3点、確認したいことがあります。一つは2000億円の新聞社救済ファンドの話のことですが、当分、ペンディングになると考えていいんですよね」
「もちろんじゃ。大地震で持ち出しよる状況じゃないわな。それに、松野と村尾を追放できよるまでは動く気もないわ。お主らとの約束じゃからのう」
「それならいいですが、我々はお役御免と考えてよろしいんでしょ? これが二点目です」
「それはまだわからんわな。じゃがな、暫くお主らに協力を頼みよるつもりはないぞ」
「まさか“二重スパイ”のあいつを使うつもりじゃないでしょうね。絶対だめですよ」

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