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桶谷 功「インサイト思考 ~人の気持ちをひもとくマーケティング」   

なぜ単身シニア男性ほどスーパーで揚げ物を買うのか?誤解だらけのシニアの消費動向

文=桶谷功/株式会社インサイト代表取締役

 また、揚げ物のなかでも「コロッケ」が突出して多いのは、値段が手頃である以上に、過去の記憶や思い入れが関係しているかもしれません。シニアにとって、コロッケは子どもの頃によく食べた記憶がある人が多いのではないでしょうか。お母さんに買ってもらって食べた、嬉しかった記憶。中学・高校の帰り道に、コロッケ屋さんなどお店で買って食べた美味しかった記憶、などなど。こうした美味しかった思い出が、揚げ物のなかでもコロッケを、思い入れのある特別なものにしているのかもしれません。

単身シニア男性は、なぜ「パン」をよく買うのか?

 パンを買う最大の理由は、「そのまま、すぐ食べられる」という簡便性でしょう。単身シニア男性は、ごはん(お米)を炊かない人も多いと聞きます。まったく調理しないで食べられる主食は、パン以外にありません。

 食パンもそのまま食べられますが、ロールパンは食パンよりもさらにそのまま食べられるイメージがあります。また、食パンはトーストして朝食に食べるイメージですが、ロールパンであれば夕食でも食べられます。単身シニア男性では、夕食もごはん(お米)ではなく、パンの人がけっこういるのです。

 また、単身でなくても、年齢が上がるほど、ごはんよりパンが好きな人が多くなります。シニアほどパンを好んで食べるのです。パンが好きな理由のひとつに、コロッケと同様、子供の頃の体験が関係しているのではないかと思われます。

 シニア(団塊世代)が子どもの頃、甘いパン(菓子パン)は特別な存在でした。わざわざ親にねだって買ってもらう食べ物。なかなか買ってもらえない、食べたくても食べられなかった食べ物には、幼心にも「思う存分食べたい」という願望が植え付けられます。

 こういう過去の記憶が、現在の消費に影響することはよくあるのです。

「コロッケ」や「菓子パン」の未来を読む

「コロッケ」も「ロールパン」も、シニア男性が好きだということを大切にすると、昔ながらの味やパッケージなどが大切になります。流行の味にしたり、いまどきのセンスのいいパッケージにしたりすると、逆に現在のファンであるシニア層が離れてしまう危険性があります。

 例えばコロッケで新しい味のラインを増やしたり、菓子パンでも昔はなかった新しい味のパンを出したりするときは、若い世代向けの新しいセンスのいいパッケージなど、新しさを打ち出してもかまわないでしょう。しかし、昔からある定番ものは、味も見え方も変わらないことが大事なのではないでしょうか。

桶谷功/株式会社インサイト代表取締役

桶谷功/株式会社インサイト代表取締役

大日本印刷(株)を経て、世界最大級の広告代理店 J.ウォルター・トンプソン・ジャパン(株)戦略プランニング局 執行役員。ハーゲンダッツのブランド育成などに貢献。2005年、著書「インサイト」(ダイヤモンド社)で日本に初めてインサイトの考え方を体系的に紹介。2010年に独立し、(株)インサイト設立。マーケティング全般のコンサルティングを行う。コンサルティング実績は、食品・飲料・日用品・クルマ・医薬品・百貨店・ファッションEC・C2C・テック系サービスと多岐にわたる。インド・中国などでのインサイト探索・戦略開発や、イノベーション開発、独自メソッドの導入・教育も行う。他の著作に「インサイト実践トレーニング」「戦略インサイト」(ともにダイヤモンド社)など。企業・協会等での講演やセミナー多数。日本広告学会会員。グロービス経営大学院MBA講師。

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