大手新聞社長、海外出張に愛人同伴でブランド品買い漁り、ついに怪文書が…
海外出張には秀香も連れ回し、ブランド品を買い漁った。田舎者の烏山はバイアグラや男宝(ナンパオ)などの精力剤には執着したが、松野と違ってブランド品などにまったく興味がなかった。買い漁ったのは秀香に間違いなかった。それは転売目的と見まがうほどで、成田空港の税関で留め置かれたこともあった。
それでも、大都は部数トップの日本を代表する新聞社である。いかに、その社長が栃木県の農家出身の田舎者でも、海外に出れば、大使以下、出先の日本大使館では秀香も含め「下にも置かない」扱いになる。成田税関も同様で、烏山が名刺を差し出せば、フリーパスだ。秀香が日本に持ち込んだブランド品をどうしたのか、今となっては知る由もない。
外交官には、生まれも育ちもいいエリートが多い。政治家たちが夏休みに連れてくる農協の幹部たちに慣れてはいたが、烏山の傍若無人な行動に、あからさまに眉をひそめる大使もいた。しかし、単細胞な烏山が外交官たちのとうかいな行動に気付くはずもなかった。影響力があると思い込み、ノー天気に「○○大使とは親しい」とあちこちで吹聴する始末だった。
烏山に負けず劣らずノー天気だったとはいえ、松野には多少のデリカシーはあった。だから、松野は烏山の海外出張に同行するのは極力避けるようにしていたが、10年前のパリ出張は同行せざるを得なかった。翌年が大都の前身の「東都新聞」の創刊から130年の節目の年で、記念事業の目玉として「大ルーブル展」の開催を計画、その調印式がパリであったのである。松野は専務として全責任を負わされていた。
出張は3泊5日の日程だった。成田空港を昼前に飛び立つと、現地時間で同じ日の夕刻にパリに着く。初日は内々の打ち合わせ会を名目に、パリ支局長らを交え市内の高級和食レストランでテーブルを囲む。翌日はルーブル美術館で展示予定の絵画を鑑賞したあと、調印式に臨む。夜はホテルのレセプションルームで、招致に尽力してくれたフランス文化省、ルーブル美術館関係者を招き、大都主催の晩さん会を催す。3日目は調印式の打ち上げと称して、ホテル内の高級レストランで身内だけの懇親会を開く。そして、最終日の4日目の午後8時頃にシャルル・ド・ゴール空港を離陸、成田には翌日の午後3時頃に着く。
それが出張日程の概要だったが、公式行事以外は秀香がべったりついて回り、烏山の妻のごとく振る舞うのが目に見えていた。しかし、記念事業の責任者である以上、出張期間中は松野が烏山と別行動を取ることは許されなかった。
(文=大塚将司/作家・経済評論家)
※本文はフィクションです。実在する人物名、社名とは一切関係ありません。
※次回は、来週1月19日(土)掲載予定です。
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