大手新聞社長、公然と経費で愛人とドンペリに溺れ醜態をさらす
「あの懇親会は変な会だった。“狆爺さん”と秀香の2人だけがはしゃいでいた。傍目には君の言う通り、品が悪いと言われれば、反論のしようのない感じだった」
「それは私も覚えているわ」
「でも、香也ちゃんも変だった。とにかくドンぺリを何杯も飲むんだ」
「そうよ。飲まなきゃ、やってられないじゃない? あんな2人と一緒なんだから…」
「コース料理も出終わり、デザートを出す前にボーイがフランス語でコーヒーかティーか聞いて回った。その時、君は『ドンペリをもう一本』と言ったんだ。でも、日本語で言ったから、パリ支局長が代わりに『ティー』と注文した」
「へえ、そんなこと言ったの。覚えていないわ」
「それで、デザートとコーヒーかティーが出て、君もデザートを食べ、ティーをおとなしく飲んでいたんだけど、突然、『ドンペリが来ないじゃない?』と言い出したんだ。そうしたら、秀香が『この小娘、酔っ払っているの?』と怒り出した。それで、パリ支局長が気をきかせて、部下に君を部屋に連れて帰らせたんだ」
「そんなことがあったの。でも、パパたちはどうしたの?」
「支局員が戻ってきたら、散会したよ。最初から白けているけど、もっと白けちゃう」
「じゃ、パパや“狆爺さん”はどうしたの?」
香也子が5杯目に口を少しつけ、肩に手を回した松野を上目づかいに見た。
「うん、さっきも言ったけど、若いパリ支局員が戻って、翌日の予定を確認して、お開きさ。話もないしね。狆爺さんは、秀香と早く部屋に戻りたかったんじゃないか」
「翌日の予定、どうだったの?」
「朝からブランド品の店を回るから、“狆爺さん”が『みんな一緒に来い』なんて言ったら大変だった。飛行機は午後8時頃だろ。2日続きで、まる1日、あの2人のお供だ。でも、君が部屋に帰っちゃったこともあって、同行を命じられたのはパリ支局長だけだったんだ」
「え、あの日は朝からルイ・ヴィトンだとか、クリスチャン・ディオールとか、ゲランとか、ブランド品の店を見て回ったでしょ。翌日も回るの?」
「そうだよ。あの日は秀香が見ただけで、買っていないだろ。翌日は目星をつけたものを買うんだ。まあ、カネは大都の経費さ。僕はいいけど、君には見せたくなかったのかもしれない。それで助かった。だから、夕方、パリ支局で落ち合えばよくなった」
「そういうことだったの」
●香也子からの誘い
「そうだよ。席を立つと、あの2人はそそくさとスイートルームに戻ったけど、パリ支局長が僕を誘ってくれた」
「え、どこに?」
「街に出てテラスで一杯どうですか、とね。でも、そんな気にならなくてね。『今日はもういいよ』っていうと、支局長もあっさり引き下がった。彼らだって、2人の面倒見るの大変だからな。息抜きしたかったろう。俺だって、いないほうがいいに決まっている」
「それで、どうしたの?」
「部屋に戻って、ブランデーを飲んでいた。そうしたら、香也ちゃんから電話があった」
「へえ、私がパパを呼んだの? そこのところを覚えていないの」
「本当に覚えていないの?」
「本当よ」
「いや、疑ってなんかいないよ。でも、あの時はびっくりしたんだ」
「どうして?」
「香也ちゃん、『私の部屋で飲もうよ』って言うんだ。僕が『本当に部屋に行ってもいいの?』と言ったら、『早く来て!』って言って電話を切られちゃった」
「パパはシメシメって思ったのね」
「いや違うよ。プライベートで色々あったの知っているから、心配になったんだ」
「それで急いで私の部屋に来たの?」
「そうだよ。部屋に行ったのは香也ちゃんに呼ばれたからなんだ」
「部屋に入ってびっくり仰天したのね」
そう言うと、香也子は独り笑みを浮かべた。
「なんだ、やっぱり、香也ちゃん、覚えているんじゃないの?」
(文=大塚将司/作家・経済評論家)
※本文はフィクションです。実在する人物名、社名とは一切関係ありません。
※次回は、来週2月2日(土)掲載予定です。
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