社長が不倫相手を好き勝手に出世させちゃう!?大手新聞社の呆れた内部
由利菜は矛を収めると、腕時計を見た。
「もう11時半ね。明日朝、閣議後の会見があるから、今日は私のマンションに帰るわ」
由利菜は帰国後、経済部の内政グループのキャップというポストを与えられた。国交、農水、厚労三省詰めの記者を束ねる役割で、国交省に席を置いていた。その日は月曜日で、閣議は毎週火曜日と金曜日にあった。国会開会中は午前9時から開くのが普通だった。
「閣議後の会見に出るの? そんな必要ないよ」
「どうして?」
「今はキャップだけど、2〜3カ月後に君はデスクに昇格するんだからね」
「それは知っているけど、先週末から官邸クラブとか政治部関係のクラブに挨拶に行ったわ。短くても、ちゃんとやるほうがいいじゃない? そうしないと、あなたも困るでしょ」
由利菜はリビングルームのドアのところまで行き、また振り向いた。
「でも、このマンション、どうして借りたの? 前の神楽坂はベッドルームが2つだったでしょ。ここは3つあるじゃない? 2つで十分でしょ」
ソファーに座ったまま身を起こして、目で由利菜を追っていた村尾はドキッとした。しかし、由利菜は村尾の顔色の微妙な変化に気づくことなく、続けた。
「1つは私の部屋にするけど、もう1部屋をどうするかな……。週末までに考えておきましょ。ニューヨークからの荷物を運び込む日が決まったら連絡するわ。私のマンションのほうも片付けたりしないといけないから、今週はもう来ないかも」
「わかったよ。夜は午後9時頃には帰っている。いつ来てもいいさ」
「じゃ、そんな気になったらね」
少し微笑んだ由利菜がリビングルームを出て行ってしまうと、村尾は立ち上がり、玄関のドアが開閉する音が聞こえるのを待った。確認すると、ベッドルームに向かった。
(文=大塚将司/作家・経済評論家)
※本文はフィクションです。実在する人物名、社名とは一切関係ありません。
※次回は、来週3月15日(金)掲載予定です。
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