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榎本博明「人と社会の役に立つ心理学」

若者が知らない「成果主義」の過酷な現実…頑張りは評価されず、同期でも給料に数倍の差

文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士
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かんぽ生命、不適切販売問題で会見(写真:東洋経済/アフロ)

 

 かんぽ生命不適切営業が世の中を騒がせている。顧客が不利益を被るような保険の乗り換えを勧めるなど、高齢者を標的とした不適切な保険販売が常態化していることが明るみに出たのだ。「郵便局なら安心」といった国民の信頼が大きく揺らいでいる。

 その背景にあるのが成果主義の徹底だ。だが、このような不祥事に潜在する成果主義の孕む問題点について、あまりに無自覚な若者が多い。成果主義というのは、経営側にとって非常に都合の良い手法なのだが、そこを勘違いして成果主義への移行を無条件に歓迎し、後押しするような声を若者の間でよく耳にする。

成果主義に対する勘違い

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『自己実現という罠』(榎本博明/平凡社新書)

 成果主義についてどう思うかを200名ほどの大学生に書いてもらったところ、多くの学生が成果主義を礼賛し、それを望むような意見を記しており、その危険性を懸念する意見は非常に少なかった。典型的にみられた勘違いをいくつか紹介しよう。

(1)頑張った分だけ報われる?

 最も多くみられた勘違いは、「成果主義になると、頑張った分だけ報われる」というものだ。「頑張り」を認めるのは成果主義ではない。成果主義においては、結果がすべてである。いくら頑張ったところで成果が出なければ評価されない。

 成果主義が徹底しているのはスポーツの世界だろう。頑張っているから試合に出してあげようといった発想は日本ではあり得ることだが、それは成果主義的にはチームの弱点となる。

 いくら頑張っても他の選手をしのぐ成果を出せなければ試合には出られない。プロスポーツの世界をみればわかるように、どんなに頑張っていても成果が出せなければ後輩に次々に抜かれ、数年でクビである。プロ野球のトライアウトでどこの球団も採ってくれずに20代で失業という選手たちの厳しい状況が、成果主義の本質をよくあらわしている。

「頑張り」を評価するのは日本流であって、成果主義を基本とする欧米では結果がすべてといった発想が学校教育の段階から浸透している。

 たとえば、欧米では小学校から留年があり、小学校低学年でも学年相当の実力を成績によって示せないと留年になる。日本では、小学校はもちろんのこと、中学校でも高校でも、成績が悪いからと留年するようなことはまずない。成績が悪くても、「本人は頑張ると言ってるから進級を認めてやってほしい」と担任がお願いし、周囲が承認する、というのがよくあるやりとりだ。いわば温情で進級する。

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授等を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした執筆、企業研修・教育講演等を行う。著書に『「やりたい仕事」病』『薄っぺらいのに自信満々な人』『かかわると面倒くさい人』『伸びる子どもは○○がすごい』『読書をする子は○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『モチベーションの新法則』『仕事で使える心理学』『心を強くするストレスマネジメント』(以上、日経文庫)、『他人を引きずりおろすのに必死な人』(SB新書)、『「上から目線」の構造<完全版>』(日経ビジネス人文庫)、『「おもてなし」という残酷社会』『思考停止という病理』(平凡社新書)など多数。
MP人間科学研究所 E-mail:mphuman@ae.auone-net.jp

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