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「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第63回

大地震後に自社からボランティアは出さず、説教だけはする巨大新聞社

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「そうだね。あの日、俺は歩いて四ツ谷の自宅マンションに帰った。午後5時半頃だったな。自宅でテレビをみて、知ったんだ」

「僕はあの日、結局、ホテルが取れなかったんです。仕方なく、八重洲で弁当とか飲み物を買って資料室に戻ったんです。それがやはり午後5時半頃でした。一人で弁当を食ったり、缶ビールを飲んだりしながら、テレビをみていました。午後11時過ぎから、地下鉄や私鉄が動き出したけど、無理に帰ることもないと思いましてね」
「君、それは大変だったな」
「いや、そんなことはどうでもいいんです。僕はあの想定外の原発事故の報道をみて、吉須さんがどう思ったか、聞きたかったんです」

 吉須は運ばれてきた赤いワインのグラスを転がし、香りをかぐだけで、雨のしずくが流れる窓に目をやり、また黙りこくった。料理人がサーロインステーキを二人の指示通りミディアムに焼き上げ、皿に載せて差し出した。

「お食事はどうされますか。ガーリックライスでも白いご飯でも、どちらでもいいです」

 料理人が二人の沈鬱なムードを破った。

「どうしますか。吉須さん」
「ふむ。白いご飯にしようや」
「じゃあ、白いご飯でお願いします」

 深井が料理人に答え、話題を本筋に戻した。

「やっぱり、ばちが当たったんですか」

 吉須はすぐに答えず、ワイングラスを取り、舐めるように飲んだ。

「ばちが当たった…。それに尽きるね。とどめを刺されたという感じだった」

 深井もワイングラスを取った。そして、ビールでも飲むように、ぐいっとやった。

「吉須さん、僕ね、資料室で一人きりでテレビを見ながら、思ったんですよね。これは“歴史の断絶”じゃないかって。どうですか」
「そうだね。敗戦と同じだろうな。でも、66年前と同じようになるかどうか。きっと日本復活の起爆剤にはならないぜ」

 この時、ご飯とみそ汁、お新香が運ばれてきた。二人とも、ステーキをオカズにご飯を食べ始め、しばらく会話が途切れた。

「日本復活の起爆剤にならないってどういうことですか」

 深井が茶碗の半分ほど、ご飯を食べると、箸を置き、吉須をみながら聞いた。

「俺は生まれていなかったけど、極論すれば、敗戦の時は日本中が焼け野原になったわけだろ。でも、今度は違う。凄惨な光景を目の当たりにした者たちとそうでない者がいる」
「吉須さんは見ていますが、僕は見ていません。事情があって逡巡しているうちだらだら2カ月経っちゃったんですが、言い訳にもなりません」
「俺だって、三陸海岸の様子は少し見たけど、原発事故の被災地に入っていない。結局、頭で考えるしかないんだな」
「テレビでは『日本の力を信じている。頑張りましょう』とか『未来を信じている。日本は強い』とか『一つになろう、日本』とか、コマーシャルがうるさいくらいに流されるけど、何か白々しい感じがします」
「敗戦の時のように日本全体が復興に燃えるようなことになるか、疑問なんだよな」
「数日前、うち(大都)の記者出身の若手代議士と出くわして、お茶を飲んだんです。その時、彼が言っていたんです。『大地震から2週間くらいは政治家全員が“自分が平成の後藤新平になるんだ”って燃えていたけど、急速にしぼんでしまった』と言っていました」
「やっぱりな。本当は大新聞やテレビの大手マスコミがジャーナリズムとしての役割を果たすには経営者が被災地に乗り込んで、現場を見る必要がある。まあ、そこまでは要求しないにしても、編集幹部はボランティアくらいはやればいい。でも、そんな話は聞いたことがない。現場には大新聞社の若い記者たちもいるが、目立つのはフリーの連中ばかりだ。彼らには一旗あげたいという野心があるかもしれんがね」

BusinessJournal編集部

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