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中西貴之「化学に恋するアピシウス」

市販のカレー、胃がん細胞減少作用が発見される

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カレーライス(撮影=筆者)

 カレーはインド発祥でタイ、日本などで特に好まれている複雑な混合物のピューレ・ソースです。その成分は完全には解明されていませんが、地域ごとに特徴のある各種の野菜、スパイス、ハーブを加熱した油で成分抽出し、素材そのものの風味とはまったく異なる味わいを生み出したソースです。

 カレーの語源もはっきりとはわかっていないものの、インド南部タミール地域にはスープを意味する「カリ」という言葉があり、これが語源であるという説が有力です。インドでは、ターメリック、クミン、カルダモンなどのスパイスを使ってつくったスープ料理を一般的に「カリー」と呼びますが、インドを超える、日本での多様性と人気は驚くべきもので、国民食の代表として、ナンはもちろん、ごはん、麺、パン、揚げ物などあらゆる食材と組み合わせて食されているのは説明するまでもないでしょう。

 日本のカレーパウダーはインドから直接ではなく、かつてインドを植民地として統治していたイギリス経由で日本に持ち込まれました。そのために、イギリス風のアレンジがされたものがベースとなっています。

 日本人がいつカレーを知ったのかははっきりしませんが、西洋の書籍に記載された知識としてではなく、実際の料理として経験したのは1863年、幕末の混乱期にフランスに派遣された使節団一行が船でインド人たちと乗り合わせたときだと思われます。

 そのことは、使節団のひとりである三宅秀の日誌に、あまりよくない印象として記録されています。というのも、まるで排せつ物のような色合いでどろどろとしており(当時のインドカレーは現在のカレーよりもさらに粘り気が強く、日本にはイギリスで手が加えられたサラサラのカレーが伝来した)、独特の香りを放つカレーに日本人が遭遇したのは初めてのことで、しかも、インド人の習慣として手で食べているのを見たためです。

 三宅は「至って汚い」と書き残しており、それがわずか100年後には日本人が大好きな食品になるとは想像さえしなかったことでしょう。その証拠に、使節団はカレーを日本には伝えず、カレーが日本で広く食されるのは明治の文明開化の時代に「西洋のハイカラな料理」としてライスカレーが普及するまで待たなければなりませんでした。

カレーに胃がんを抑制する作用を発見

 近年、そのカレーに新たな効能が発見されました。秋田大学の研究者らが東北大学などとの共同研究により、カレーに含まれるスパイスの一種であるクルクミン(ウコンの黄色色素)を加熱することによって生成する化合物「GO-Y022」がヒトの胃がん細胞の増殖を抑制し、さらには細胞自殺(アポトーシス)を誘導して胃がん細胞を減らす作用があることを発見したのです。

 また、将来的に胃がんを起こす血統のマウスに0.5%のGO-Y022 を含むエサを与えて育てると、GO-Y022 を含まないエサで育てたマウスと比較して、腫瘍のサイズが約3分の1に収まることが確認されました。さらに、市販のカレールーを分析したところ、同様にGO-Y022が含まれていたということです。

 以前より、GO-Y022の元であるクルクミンには、アルツハイマー病との関係が指摘されているAβと呼ばれるタンパク質が脳の中でかたまりをつくることを防ぐ作用や、細胞のがん化を抑制することが知られていました。特に細胞がん化抑制は疾患に直結しているため効能が注目されましたが、クルクミン単独では効力が弱く、治療効果を得ることは困難で、クルクミンを基本骨格とした治療薬の研究が進められています。

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