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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

米国と北朝鮮、歴史的急接近…中国、金正恩に裏切られ米中貿易戦争敗北&習近平失脚の危機

文=相馬勝/ジャーナリスト
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 問題となったのは「(北)朝鮮は非核化に向けて、米国と忍耐強く対話」という部分で、北朝鮮側が「朝鮮半島全体の非核化」とするよう要求。さらに、北朝鮮側は案文に「国連安保理による制裁の早期解除」を付け加えるよう求めたが、中国側が難色を示すなど、両者は険悪な状態に陥ったという。

 まず、米朝対話や北朝鮮の非核化をめぐって、中国側の案文では当初「(北)朝鮮は非核化に向け、米国と忍耐強く対話を続け、朝鮮半島の諸問題を解決」となっていたのに対して、北朝鮮側は非核化の範囲について、「朝鮮半島全体に広げるべきだ」と主張。さらに、北朝鮮は制裁問題でも「早期の解除を求めることで中朝両国は一致した」との文言を加えるように要求したのである。

 これらの両国の対立については、両国の国営メディアの報道内容にも現れており、中国国営の中国中央テレビは20日、金氏が会談で「忍耐心を持って米国と対話を続け、朝鮮半島問題を解決していく」と発言し、習主席は北朝鮮の安全保障と発展を「力の及ぶ限り手助けする」と述べたと報じたが、朝鮮中央通信は言及していない。

 また、同通信は金氏が制裁に関して「わが国は経済発展と住民の生活改善のために努力しており、外部環境が改善されることを希望している」と述べて制裁の解除を求めたが、中国メディアは金氏の発言を無視している。

 北京の外交筋は「習氏は米中首脳会談の前に北朝鮮への影響力拡大を狙い、金氏は経済支援を求めるなど、両国は所詮、同床異夢であることが明らかになった」と指摘している。

 さらに、習氏に対する金氏の最大の裏切りは、この時点で、金氏はトランプ氏から板門店での首脳会談を提案されていたのにもかかわらず、習氏に黙っていたことである。少なくとも、習氏が板門店会談の可能性を知っていたら、6月29日の大阪での米中首脳会談の場で、「俺は知っているのだぞ」とばかり米側の秘密を暴露し、トランプ氏の鼻を明かしていただろうことは想像に難くない。しかし、中国側が3度目の米朝首脳会談を知ったのは、その直前であり、しかもCNNなどの米メディアの報道だったのである。まさに、習近平の面目丸つぶれだ。

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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