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つまり、玉ねぎにとって二硫化アリルは、動物に食べられないための自衛措置といえます。硫黄化合物を鱗茎の中にため込み、「俺は食べると体調が悪くなる植物だぞ」と、においで警告するように進化した結果です。
しかし、人間は栄養の宝庫ともいえる鱗茎を食用として活用できるように、二硫化アリルを分解する解毒能力を進化させてきました。さらに、二硫化アリルのにおいをごまかすような調理方法を工夫した結果、ペットの犬や猫は気づかないうちに人間から玉ねぎを食べさせられるリスクが高くなってしまっています。
たとえば、ハンバーグやステーキソースには玉ねぎの二硫化アリルが溶け出していますが、ペットは油やソースの強烈なにおいにごまかされて食べてしまうことがあります。そうすると重篤な食中毒になり、貧血や嘔吐、意識混濁を引き起こしてしまうため、注意が必要です。
(文=中西貴之/宇部興産株式会社 環境安全部製品安全グループ グループリーダー)
【参考資料】
「タマネギ研究でのイグノーベル賞受賞について」(ハウス食品)
『マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで-』(共立出版/Harold McGee 著、香西みどり監訳、北山薫、北山雅彦訳)
『食べ物はこうして血となり肉となる~ちょっと意外な体の中の食物動態~』 野菜を食べると体によい。牛肉を食べると力が出る。食べ物を食べるだけで健康に影響を及ぼし気分にまで作用する。なんの変哲もない食べ物になぜそんなことができるのか? そんな不思議に迫るべく食べ物の体内動態をちょっと覗いてみよう。
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