中国側の“自己申告”
そんな中国産の速成鶏が輸入され、知らぬ間に我々が食してしまう可能性はあるのだろうか? 日本フードアナリスト協会所属のフードアナリスト、重盛高雄氏に聞いた。
「現在の鶏肉輸入は、部位別に加工されたフローズン(冷凍)、および焼き鳥や唐揚げなどの加熱処理した調整品に限られています。つまりスーパーなどで見かける外国産生肉は、相手国の仕様にあわせて加工冷凍されて輸入されたものということになります。
また、厚生労働省が定めた『ポジティブリスト制度』により、食品中に残留する農薬などが、人の健康に害を及ぼすことのないように、すべての農薬・飼料添加物・動物用医薬品について、残留基準を超えるものは輸入・販売が禁止されています。ですから中国産の速成鶏についてそこまで懸念する必要はないでしょう」(重盛氏)
重盛氏はそう前提の解説をしたうえで、「ただし、速成鶏の脅威がゼロだとも言えません」と続ける。
「まず、農薬不使用、不検出でなければ輸入できないということではないため、残留農薬が基準値以下であれば問題ないとされています。ただ日本の養鶏場でも、病気を抑制するための薬を飼料に混ぜて使用するのは一般的ですし、成長剤が必ずしも悪いものというわけではありません。しかし、加熱処理をしたとしても薬品成分は完全には消滅せず少量は残るものですから、安全基準を満たしているとはいえ、心配は残るでしょう。
そして、ここが一番のポイントなのですが、厚生労働省のサイトで紹介されている残留農薬値の調査方法を見てみると、『中国政府が原料生産から加工製造工程までの管理を行い、輸出前検査についても実施している』と記載されているのです。つまり、日本の厚労省がチェックしているのではなく、あくまで中国側の“自己申告”をもとに制限しているだけなのです。
鶏を飼育している業者は、中国政府への登録をしなければ輸出は認められていないとされているものの、どこまで中国政府が厳密に管理しているかなどは公表されていません。そもそも健康的な鶏であったかどうかは、飼育されていた環境や飼料などを精査しないと判断できませんし、加工製品の場合は飼育元を追えない可能性も高いのです。
つまり、農薬・飼料添加物・動物用医薬品の残留基準を超えるものは輸入・販売が禁止されているとはいえ、『過剰に抗生物質や成長ホルモン剤が投与されて残留基準オーバーとなっているであろう速成鶏は、100%日本に入ってきていない』とは言い切れないのが実情なのです」(同)