2013年1月、抗生物質や成長ホルモン剤を大量に投与して出荷時期を早めた中国産・鶏肉、通称「速成鶏」が、上海のケンタッキーフライドチキンで使用されていたことが発覚した。また、この鶏の家畜から販売までを行っていた中国の企業・河南大用グループは、病死した鶏肉も中国国内で販売しており、日本のマクドナルドにも同社の鶏肉は使用されていたと当時報じられていた。当時、日本マクドナルドは「中国の河南大用グループから供給を受けていることは事実だが、メーカーから悪い品質の鶏肉が出たという調査報告はない」と、コメントを出している。
5年前に報じられたニュースだが、実は今、この問題に再び注目が集まっている。というのも、厚生労働省の研究班が、流通している鶏肉を食肉検査所などで2015年度~2017年度にかけて約550匹分調べたところ、49%から抗生物質が効かない薬剤耐性菌が検出されたという調査結果が、3月31日に発表されたのだ。これは国産の鶏肉や輸入の鶏肉どちらからも検出されたそうだが、病人や高齢者を除く健康な成人であれば、口にしても影響はないという。
さて、問題は家畜に与える抗生物質についてである。家畜の成長を促す目的で抗生物質を与えることは珍しいことではないが、この厚生労働省による発表がきっかけで、家畜に過剰な抗生物質などの使用は控えるべきという“そもそも論”に、改めてスポットが当たっているのだ。
無投薬鶏の倍速で育った超速成鶏
話を中国産の速成鶏に戻そう。日本の養鶏場で育成される鶏肉は、適量の抗生物質や成長ホルモン剤を与える場合は生後50日程度で出荷されるそうで、無投薬で育てる場合は60日程度で出荷されるという。一方、中国の悪質養鶏場で過剰に抗生物質や成長ホルモン剤を投与された速成鶏は、生後40日~43日前後で出荷されるそうで、河南大用グループではたった生後30日で出荷されていたケースもあったという。
仮に半分の日数で育成・出荷できれば、同規模の養鶏場と比べ2倍の売上高が望めることになる。あくまで単純な計算だが、通常50日の育成期間ならば年間で約7サイクルのところを、育成期間を40日に縮めることで年間約9サイクルできるようになるため、それだけ悪徳養鶏業者の利益が上がることになる。
出荷される鶏の重量は一般的に1羽2~3kgである。無投薬で育てる場合60日間かかるところを、その半分の30日間でその重量まで成長させてしまうとしたら異常といえるだろう。