帰りは21時50分に梅田を出て新宿に6時40分に着くバスだ。このバスが正解だった。ゆったりした3列シートで前列とのシート間隔は93cm、リクライニングの最大角は140度もある。さらにフットレスト付き。コンセントやWi-Fi、テーブルもセットされている。そして、シートごとにパーソナルカーテンが用意されているので、ほぼ個室状態だ。4列シートの料金に1600円ほど上乗せするだけで、快適さは雲泥の差である。
帰りの便は若い人に交じってサラリーマン風の中年男性や女性の親子連れもいた。走行は順調。京都で乗客を乗せ、途中3カ所で休憩。ほぼ定刻通りに新宿に到着。帰りは行きのバスよりもぐっすりと眠ることができた。
寝台特急が次々と姿を消していくなか、深夜の格安バスは安上がりに旅行を楽しみたい若者や外国人旅行者にとっては心強い味方であり、魅力的な移動手段なのだろう。バスタ新宿や梅田モータープールには、次々と人々が集まってくる。
“安かろう悪かろう”は過去の話。3000円ちょっとで快適なシートを選ぶこともできる。ドライバーも2人態勢だから安全面も強化されている。時間に余裕があり、体力に自信がある人にはおススメの移動手段かもしれない。
東京-札幌、片道9990円のバス&フェリー便も
後日、東京駅に隣接したオフィスビルで取材を終えた後、東京駅八重洲口にあるJRバスのチケット売り場をのぞいてみた。東京駅八重洲南口からも夜行長距離バスの路線が多数運行されている。青森、秋田、富山・金沢、長野、名古屋、大阪、高知、高松、広島、出雲など。東京-大阪は料金表示がない。その日の需給によって価格が変動するためだ。
いろんなパンフレットを手に取って見る。このなかから異色な組み合わせを見つけた。フェリーと高速バスの組み合わせである。東京駅-札幌駅が片道9990円。期間は9月30日まで。これはバス乗車券(東京駅-大洗港、苫小牧港-札幌駅)とフェリー乗船券(大洗港-苫小牧間)がセットになった連絡切符だ。
東京駅14時20分発の高速バスだと、茨城県・大洗港に16時44分に到着。19時45分発のフェリー「さんふらわあ」に乗船して翌日13時30分に苫小牧港着。苫小牧港13時56分発の高速バスに乗り換え、札幌駅に15時48分に到着する。約25時間の超長旅である。料金は期間によって変動する。フェリーは料金を上乗せすれば部屋のランクアップが可能だ。フェリーの旅客運賃だけで9900円するから、9990円の連絡切符は割安である。
もちろん、LCCなら成田-新千歳が4390円という設定もある。フェリー&バスは格安感、所要時間ではLCCにはかなわない。のんびりと安上がりな船旅をしたいという人向けか。
北海道から九州まで全国各地で運休、廃線となる鉄道路線がある一方で、長距離の格安夜行バスには活気がある。令和という新しい時代を迎えたが、デフレがいまだ続いているのだと痛感する。
(文=山田稔/ジャーナリスト)